平成61994)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

6−共研−62

専門分類

7

研究課題名

競合死因に基づく寿命短縮構造の解析

フリガナ

代表者氏名

ノダ カズオ

野田 一雄

ローマ字

所属機関

明星大学

所属部局

理工学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

8 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

動物の死亡ないし寿命短縮の原因が複数個あって、それらの影響が競合する場合には、着目する原因による寿命(短縮)の確率分布は、そのままの経験分布からでは他の原因の影響の競合によって見かけ上の推定分布しか得られない。したがって、この見かけ上の推定分布を用いて動物の死亡あるいは寿命短縮を推論すると危険である。
本研究では、以上のような問題の背景を考慮し、着目する原因が個体に単独に作用し競合する原因の影響が除外されたと想定されるモデルを設定し、このモデルのもとでimplicitな生存曲線を推定することを中心に、競合死因に基づく動物の死亡ないし寿命短縮の構造を研究する。


本年度は、放射線被爆マウスの終生飼育データおよび対照群としての非照射マウスの終生飼育データについて、COX型回帰すなわち比例ハザードモデル(under-lxing distributionの族としては、これまでの研究にふまえてWeibul分布族とする)を適用し解析した。
放射線によっていずれのマウスも複数個のがんを発生し、これらが死因として競合する影響を与えるために、着目する死因による寿命短縮を考える場合、この死因の死亡個数から直接生存曲線を推定してもみかけ上のものが得られる。
本研究では、着目するがんの影響によるマウスの寿命短縮を、他のがんの影響がないと想定されたもとで得られるimplcitな生存曲線の推測を上記モデルの適用によって実現し、解析した。共変量としては、ダミー変数として非照射、照射の群別、照射の群では部位別照射に細分されるものを表す。パラメータの推定は全尤度による最尤推定を考えた。
解析の結果は、まずCOX回帰係数ベクトルを0とおく帰無仮説が棄却されたことから、各群の設定が意義をもつことが示された。着目するがんについて非照射群と各部位別照射群との平均寿命の有意差検定は、これまでのモデルによる有意差検定のそれらよりも帰無仮説を棄却するものが多く、今回の検定方式の方がこれまでのものより感度がいいことが示された。
部位別照射のマウスの個数が僅少であるものに、今回とこれまでのものの平均寿命推定値にかい離が観られるものがあった。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文発表を準備中


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

これまでの研究によって、放射線(X線)被曝マウスおよび対照群としての非照射マウスの終生飼育実験によって、これらのマウスの死亡時期等のデータが得られている。白血病や種々の腫瘍等がこれらのマウスの死亡ないし寿命短縮に影響を与える競合死因を構成する。この場合「研究目的」において述べたモデルの設定とimplicitな生存曲線の推測にワイブル分布族の適合が最適であることが明確となり、これを基にしてワイブル確率紙を用いる推測法、さらに最尤法による推定法とこれに基づく検定法を開発してきた。
本年度には、X線部位別ならびに照射群、非照射群別に設定されたモデルの基でimplicitな生存曲線の推測を行ったこれまでの研究をふまえ、これらを総合するモデルとして生存曲線が類を指定する補助変数をもつvegressionタイプのモデル設定を行う。このモデルのもとで、類間にわたるimplicitな生存曲線の推測を行い、総合的な寿命短縮の構造を解析すると共に、これらを類別に行われたこれまでの研究結果と比較する。
とくに、これまでの研究によってimplicitな生存曲線が着目する死因(がん)によってshapeのタイプが異なっていることが発見されているが、このタイプを規定するパラメータの関数を見出すこと、ならびにその推定法の研究は補助変数をもつvegressionモデルのもとで新たに続行する。
本研究は、各分野の知識・情報の集約と研究の担い手を必要とするために、統計数理研究所の共同研究として実施されることが望ましいと考える。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

加藤 寛夫

国立水俣病研究センター

佐藤 文昭

北海道大学

清水 由起子

放射線影響研究所

鈴木 和幸

電気通信大学

三野 大来

順天堂大学

宮岡 悦良

東京理科大学

村上 征勝

統計数理研究所