平成51993)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

5−共研−76

専門分類

7

研究課題名

呼吸の神経機構の統計数理学的研究

フリガナ

代表者氏名

オク ヨシタカ

越久 仁敬

ローマ字

所属機関

京都大学

所属部局

胸部疾患研究所

職  名

助手

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

近年、脳幹内の呼吸ニューロン間の入出力関係が明らかにされつつあるが、本研究は、それらの電気生理学的知見を基にして呼吸中枢のニューロン機構、特に呼吸リズム生成の機構を統計数理学及び非線形力学を用いて解明することを目的とする。本年は、プロジェクトの2年目に当たる。


1)片側性の延髄吻外側部損傷患者でも睡眠時に異常呼吸が起こることが知られているが、この機序は不明である。我々は、呼吸ニューロン回路の一部が損傷された場合の挙動を数学モデルを用いて検討した。モデルは漸減型吸息性(I−DEC)・漸増型吸息性(I−AUG)・漸減型呼息性(E−DEC)及び漸増型呼息性(E−AUG)の4ニューロン群からなる。4群は全て持続的興奮を受ける。
I−DECとE−DECは順応性を持ち、さらにI−DECは自己興奮性を持つ。I−DECとE−DEC及びE−DECとE−AUGは相互に抑制しあい、I−DECはE−AUGを抑制する。I−AUGは他の3群から抑制を受ける。この回路のシミュレーションを4次のRunge-Kutta法で行った。モデルは適当なパラメータを与えることで安定したリミットサイクルとなり、各々のニューロン群の膜電位変化は実験データとよく一致した。また、パラメータ値を変えることによって、呼吸振動子の軌跡はリミットサイクルからperiod doubling bifurcationをへてカオス様に変遷した。結果は、安定振動要素の残存する回路でも要素間の相互作用で様々な呼吸パターンをとることを示している。
2)除脳・迷切・筋弛緩ネコにおいて、上喉頭神経電気刺激は一般に、吸息時に行うと吸息を抑制して呼吸位相を進め、呼息時には呼息を延長させ呼吸位相を遅らせるが、少数例で呼息終期の刺激で吸息の誘発が観測される。その場合、吸息早期の刺激では吸息を一過性にしか抑制できない。上記のモデルを用いたシミュレーションでは、刺激が漸減型呼息性ニューロンのみならず漸減型吸息性ニューロンも興奮させると仮定した場合にこの現象が再現できた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

越久仁敬、上喉頭神経刺激に対する呼息終期の逆説的位相応答、第71回日本生理学会、1994年3月25日
越久仁敬・久野健志、不規則呼吸生成機序の呼吸ニューロンネットワークによる検討、だい34回日本胸部疾患学会、
1994年4月26日

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

イ)ネンブタール麻酔ネコにて、延髄の呼吸ニューロンの発火パターン時系列を解析して呼吸パターン・ジェネレータの内部構造を推測する。本年は、呼吸ニューロン・ネットワークの数学モデルを計算機シミュレーションを行って、実際の挙動を説明できるか検討する。
ロ)除脳ネコにて、上喉頭神経電気刺激により呼吸リズムを様々な位相でリセットさせて得られた位相応答曲線と計算機シミュレーションで得られる応答が一致するかどうか検討する。
本研究には高度の数理解析理論を要するため、統計数理研究所との共同研究を行うことが必須である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

田村 義保

統計数理研究所

樋口 知之

統計数理研究所