平成192007)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

19−共研−2022

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

3

研究課題名

脳卒中死亡率の動向からみた脳卒中対策の評価

フリガナ

代表者氏名

ナカムラ タカシ

中村 隆

ローマ字

NAKAMURA, Takashi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

100千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究の目的は、脳卒中の死亡率や罹患率の動向の変動要因を分析し、健康日本21の方針を視野に入れた21世紀の脳卒中対策の考案にかかる指標を提示することである。
平成16年度から18年度までに実施した脳卒中死亡率(全国)や罹患率(富山県)の動向分析においては、過去の変動要因として、加齢のほかに、人々が異なる時代背景を歩むなかで形成された「世代の違い」や、これまでの脳卒中対策を含めた社会環境全体の変化など「時代」の影響が示された。これらの変動要因の効果推定値の推移は、脳卒中対策の歴史的変遷やそれに関連する社会統計資料を照合したところ、従来の脳卒中対策の成果である示唆を得た。そこで国レベルでの対策の指標の1つとして、過去の年齢・時代・世代効果の推定値をもとに、2005〜2050年における人口の年齢や世代構成の変化を加味し、さらに今後の対策を反映する時代効果の傾向として設定した3つのシナリオについて脳卒中死亡数の将来推計値を算出した。また、地域レベルでの対策の指標の提示に向けて、各都道府県における脳卒中死亡率の動向(1960〜2000年)について、年齢・時代・世代効果の推定値の算出を行った。地域による違いは、男性は時代効果に、女性では世代効果において目立つ印象があった。
以上の流れを受けて平成19年度においては、地域レベルの対策の成果を示唆する時代効果と世代効果に着目し、都道府県の各効果推定値について主成分分析を行うことにより、地域の特徴を整理した。時代効果からは、全期間における変化の大きさの違い(the change-in-magnitude indicator)と減少傾向に転じた時期の違い(the time-of-decrease indicator)に関する2主成分を抽出できた。世代効果からは、世代全体における変化の大きさの違い(the change-in-magnitude indicator)、最近の世代における変化パタンの違い(the pattern-in-recent cohorts indicator)、および変化が現れ始めた最初の世代(the first-cohort-of-improvement indicator)に関する3主成分を抽出できた。これらの特徴は、脳卒中対策の如何によって生じた地域の違いを反映する指標になり得ると考えた。そこで、これらを指標として都道府県を分類し、日本全体を俯瞰できるようにマッピングした。今後は、その地理的分布や、分類地域を単位とした他情報源との照合により、評価指標としての検証を行う予定である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

【脳卒中死亡率の分析について】

平成19年度は、1)、2)の学会発表、および1)に関する論文を投稿中である。

1) Miwa, N., Nakamura, T. and Ohno, Y.(2007).
Constructing indicators to evaluate community policies based on period and cohort effects on Cerebrovascular disease mortality rates,
The 39th Conference of the Asia-Pacific Academic Consortium for Public Health, Abstract Book, 191-192.
2) 三輪のり子・中村隆・大野ゆう子(2007).
脳血管疾患死亡におけるPeriod効果とCohort効果の脳卒中対策評価指標としての検討,
日本公衆衛生雑誌,第54巻第10号,417.
3) 三輪のり子・中村隆・成瀬優知・大江洋介・大野ゆう子(2006).
わが国における20世紀の脳血管疾患死亡率の変動要因と今後の動向,
日本公衆衛生雑誌,53巻,7号,493-503.
4) 三輪のり子,中村隆,大野ゆう子(2006).
都道府県別にみた脳血管疾患死亡率のAge-Period-Cohort効果?6都道府県における試み?,日本公衆衛生雑誌,53巻,10号,605.
5) 三輪のり子,中村隆,大野ゆう子,大江洋介,成瀬優知(2006).
脳血管疾患の病型別死亡数の将来推計?ベイズ型ポアソンAge-Period-Cohortモデルに基づく?,第26回医療情報学連合大会抄録集(CD-R),158(P18-1).
6) 三輪のり子・中村隆・成瀬優知・大江洋介・大野ゆう子(2005).
日本の脳卒中死亡数の2050年までの将来推計,
日本公衆衛生雑誌,52巻,8号,611.
7) 三輪のり子・成瀬優知・中村隆・大江洋介・大野ゆう子(2004).
脳卒中死亡率のAge-Period-Cohort分析(1報)脳梗塞,
日本公衆衛生雑誌,51巻,10号,509.
8) 成瀬優知・三輪のり子・中村隆・大江洋介・大野ゆう子(2004).
脳卒中死亡率のAge-Period-Cohort分析(2報)脳出血・クモ膜下出血,
日本公衆衛生雑誌,51巻,10号,509.

【脳卒中罹患率(富山県)の分析について】

1) 三輪のり子・成瀬優知(2004).
出生コホート分析を用いた脳卒中罹患率の検討?富山県脳卒中情報システム事業より?,
厚生の指標,51巻,11号,10-16.
2) 三輪のり子・成瀬優知(2003).
出生コホート法を用いた脳卒中発症率の比較?富山県脳卒中情報システム事業より?,
日本公衆衛生雑誌,50巻,10号,517.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

開催はありませんでした。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

大野 ゆう子

大阪大学

三輪 のり子

大阪大学