平成31991)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

3−共研−68

専門分類

7

研究課題名

競合モデルに基づく死因分析

フリガナ

代表者氏名

ノダ カズオ

野田 一雄

ローマ字

所属機関

明星大学

所属部局

理工学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

9 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

動物の死亡ないし寿命短縮の原因が複数個ある場合,これらが競合するために,着目する原因が単独に作用すると想定されるときの結果現象への寄与を解明することが重要である。本研究では,このような競合モデルを設定し,上記implicitな生存曲線の推定を中心として,寿命短縮の構造を解析することを目的とする。


X線を被曝したマウスのがん発生による寿命短縮の構造を研究した。その場合、複数の種類のがんが発生するためにマウスの寿命短縮への競合する原因compeing risksが生成されることになる。一つの原因に着目するときには、他の原因が除かれていると想定されたマウスのimplicitな生存曲線を解析することが重要である。前年度までに、ワイブル分布族による競合危険モデルを設定し、これによるimplicitな生存曲線の最尤推定法と、処理群と対照群との漸近的最適な有意差検定法を導出した。本年度は、これらの方法によって、具体的にデータ解析を行った。
10週令の578匹の雌マウスの(1)600R全身照射、(2)800R頭部照射、(3)800R躯幹部照射、(4)800R下肢部照射、(5)対照群(非照射)に分けられた各群の完全終生記録がデータである。各群の各原因に着目するimplicitな生存曲線の最尤推定法はKaplan-Meierノンパラメトリック推定のそれらとよく合致した。また、implicitな生存曲線は競合モデルを置かない場合のそれらと明白な有意差をあらわし、競合モデルを設定しない取扱いへの警告を示す。悪性リンパ腫については、対照群と各部位の照射群との間に、implicitな生存曲線に関する平均寿命についての有意差が観られた。肺腫瘍についても同様な傾向が示された。乳腫瘍については、頭部位以外について同様な傾向が観られた。
なお、モデルにワイブル分布族を置くことの妥当性は、既にワイブル確率紙によって検証されたことを報告しているが、今回の最尤法、とくに死亡の観測比率と理論からの推定値との近似によって再認識された。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Noda,K.,Azuma,S and Miyaoka,E., On testing the difference of the means of survival functions under competing risks, SUT Journal of Mathematics, Vol.27,Number1(1991)、73-88


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

本年度は,ひき続き,実験によって得た放射線被曝マウスの死亡等記録データの解析を推進する。昨年度は,競合モデルを規定する分布族をワイブル分布族として,上記生存曲線を最大法によって表出し,着目する死因別に対照群との有意義検定を行った。この成果にふまえ,次の項目を重点的に研究する。
1.被曝部位の類別に応じて,死因相互の生存曲線の比較検討を行う。とくに,相対的な意味で,映発効果の様相を解析する。
2.方法として,競合モデルにおける有意義検定の他にも,Cox regression modelの適用を工夫する。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

加藤 寛夫

国立水俣病研究センター

佐藤 文昭

北海道大学

清水 由起子

放射線影響研究所

鈴木 和幸

電気通信大学

田ノ岡 宏

国立がんセンター

三野 大来

順天堂大学

宮岡 悦良

東京理科大学

村上 征勝

統計数理研究所