平成262014)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

26−共研−2024

分野分類

統計数理研究所内分野分類

c

主要研究分野分類

3

研究課題名

ベイズ的アプローチに基づく身長分布の経年変化推定

フリガナ

代表者氏名

イワタ タカキ

岩田 貴樹

ローマ字

Iwata Takaki

所属機関

常磐大学

所属部局

コミュニティ振興学部

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

2千円

研究参加者数

4 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 本研究課題の目的は、身長が従う分布の、詳細な経年変化を、ベイズ的なアプローチで求めることである。身長は、正規分布に従うデータの典型として、教科書などでよく取り上げられるが、実際にそうであるかどうかは、未だに議論が分かれており(例えば、Limpert [2001, BioSci])、特にこの議論に寄与することを目指して、解析を試みた。
 Kuninaka et al. [2009, J. Phys. Soc. Jpn.](以下、K2009)では、文部科学省による学校保健統計調査をデータとし、人間の身長分布が正規分布・対数正規分布のどちらに近いかを、年齢および性別ごとに調べた。その結果は、男女共、幼年期の身長は対数正規分布に近く、成長期にかけて正規分布に移行するというものであった。
 2012年度および2013年度の共同利用(24-共研-2018、25-共研-2024)では、K2009の結果の再検討を試みた。K2009が解析において使用した学校保健統計調査では、年齢階級幅を1年としたデータのみが提供されていること、そして、これによって生じる分布の混合効果をK2009は考慮しておらず、「対数正規分布から正規分布への移行」という結論は、この混合効果による見掛け上のものに過ぎない可能性があることを指摘した(詳しくはIwata et al. [2013, J. Phys. Soc. Jpn.]参照)。
 しかし、真に対数正規分布から正規分布への移行が生じているかどうかは、サンプルの年齢に精度を持つデータを解析し、平均など身長分布のパラメータが滑らかに変化するような統計モデルを用いて検討する必要がある。そこで、以下のような解析を行った。
 データは、社団法人 人間生活工学研究センターが作成した「日本人の人体計測データ: 1992-1994」を用いた。これは、小数点第2位までの年齢情報を含んでいる。但し、有料であるため、研究資金の関係で、入手することの出来た男女6〜18歳までの身長データを対象とした。
 身長が従う確率分布は、正規分布と対数正規分布の和で表され、正規分布および対数正規分布のパラメータおよび両者の重み(混合パラメータ)は滑らかに経年変化する(ある分散を持つ正規分布に対応したランダムウォークを行う)と仮定して、上記データへの当てはめを試みた。実装にあたっては粒子フィルタを用いた。
 解析の結果、対数正規分布から正規分布への移行が見られ、K2009の結果は、必ずしも見掛け上のものではない可能性が改めて見出された。但し、粒子フィルタを用いたため、粒子のいわゆる縮退が部分的に生じていることや、パラメータの経年変化に対する滑らかさに対する重みの選択が、厳密でないことなどから、今後、さらなる検討が必要である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

[学会発表]
 國仲寛人, 児童の体重分布に見られる統計的性質, 日本物理学会2014年秋季大会, 2014.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

(該当なし)

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

國仲 寛人

三重大学

山崎 義弘

早稲田大学

吉本 敦

統計数理研究所