平成142002)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

14−共研−2040

専門分類

7

研究課題名

木曽ヒノキ林4ha調査区における主要個体群の空間配置解析とモデリング

フリガナ

代表者氏名

シマタニ ケンイチロウ

島谷 健一郎

ローマ字

SHIMATANI Kenichiro

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析系

職  名

助手

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

長野県木曽谷に成立する天然生ヒノキ林は大径木からなる貴重な森林資源であるが、林分によっては
下層は別種アスナロが優占し,優良ヒノキ材の持続的生産が心配されている。そこで本研究では、木曽
ヒノキ林下層におけるアスナロ個体群動態を明らかにするために、既存の大面積固定調査区で得られた
樹木幹の10年間の継続的調査結果から、個体群動態に関する仮説を立て、さらに適切な空間解析手法
を開発して、その妥当性を検証することを目的に調査・解析を行った。
 まず1988年(初回測定)および1998年(10年後)の2回の毎木調査データ及びこの間の経験的知識並び
にその星野・山本によるデータ解析に基づき、星野が木曽ヒノキ林で比較的一般的な林相である択伐林
分において、次のような仮説を立て、これを本研究の主題とした。「概して下層木は択伐等で林冠にギ
ャップが生じると成長が促されると言われているが,このヒノキ林では逆に光環境が良好なギャップ下
より、より光環境が劣悪な閉鎖林冠下の方がアスナロは相対的に多く分布する空間配置をとる。これは
林冠木樹幹から遠いギャップ下では、林冠木樹冠が直上にないためにアスナロ下層木は冬季の雪氷被害
等をより受けやすく、生残しにくくなっているためである。」
 次のような行程で、研究は進められた。
2002年7月 現地調査
8月 現地調査・研究会議
9月 現地調査
10月 研究会議
2003年2月 研究会議・現地調査
3月 研究会議
 この仮説をデータから客観的・数量的に示すため,島谷は既にしばしば使われている nearest neighbor
analysis を発展させてこの目的に合致させる形に formulate し,データに適用した。その結果、林冠木の
近距離階級には、アスナロ下層木がより多く分布し、また10年間で枯死したアスナロ下層木も、同階
級でややより少なく分布するという空間配置が明らかになり、仮説は支持された。しかしながら、この
10年間の枯死原因は林冠木からの距離階級に関係がなく、この点は仮説と異なった。むしろ、より大
きな同種下層木の近距離階級に、枯死木がより多く分布しており、少なくともこの10年間は、同種間
の一方向的な被陰が大きく影響したものと考えられた。
 これらの成果は、まず星野が中部支部林学会大会で口頭発表し、その後,山本の助言を踏まえて星野・
島谷で作成した原稿に山本が最終的手直しを加えて論文としてまとめ、2003年4月,統計数理研究所
Research Memorandum に登録し、Journal of Ecology に投稿した。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

口頭発表
星野大介,島谷健一郎,山本進一,赤沢ヒノキ老齢林のアスナロ下層木の空間分布パターン?距離階級頻度分
布図を用いた解析。第51回日本林学会中部支部大会。平成14年10月(大会講演要旨集 P4)。
論文
HOSHINO D.,SHIMATANI K.and YAMAMOTO S.Spatial dynamics of shade-tolerant evergreen conifer
Thujopsis dolabrata understory in a temperate old-growth coniferous forest.Research Memorandum No.873.
2003/4/24.The Institute of Statistical Mathematics.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

星野 大介

名古屋大学大学院

山本 進一

名古屋大学