平成31991)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

3−共研−61

専門分類

7

研究課題名

表皮組織中の腫瘍の幾何学モデル

フリガナ

代表者氏名

ホンダ ヒサオ

本多 久夫

ローマ字

所属機関

兵庫大学

所属部局

経済情報学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

ヒト皮ふの表皮組織は多面体の表皮細胞が3次元空間にすきまなく詰まったものである。ここに存在する微小腫瘍細胞巣は,表皮細胞間結合をずらしたり,解離させてできた多面体である。細胞巣の形としてはどのような多面体が可能なのかを幾何学的に推測し,実際と比較する。


ポートリエ微小腫瘍は、表皮組織中に悪性リンパ腫由来の白血球がつまったほぼ球状の構造体である。血液中の白血病細胞が、宿主により表皮組織を経て排泄される過程、すなわち、生体防御反応の結果できると考えられている。この白血病細胞塊は、表皮の多層上皮細胞からなる組織を押しひろげて、表皮組織中に球状の洞を形成している。この洞の形成および形態の研究に関して以下のような進捗があった。
1.膿瘍洞の3次元構築 厚み1ミクロンの連続組織切片標本を作製し、連続的な光学顕微鏡像から画像解析装置をつかって、ポートリエ微小膿瘍の扁平表皮細胞に包まれた洞を再構築した。洞をとり囲む表皮細胞の体積を定量したところ、正常表皮細胞に比べて2倍余り大きくなっていることが判明した。この結果は今後の詳しい測定によって確定すべきものである。
また細胞表面には数多くのデスモゾームが敷詰まり、大きな表面積を保存しているが、洞の内側に面した細胞ではそれらが失われ表面は平坦であることが明らかになった。表皮細胞が洞壁を形成することにより細胞一個当りの表面積はどう変化するのか、興味がもたれ測定を進行中である。
2.パジェット癌の形成 表皮組織中に、ポートリエ膿瘍とは別の癌細胞の塊がみられることがある。これはパジェット癌とよばれ、白血病細胞ではなくて腺癌細胞から形成されている。この細胞塊が表皮組織の汗腺の管状構造から表皮に放出されているのか、あるいは表皮基底膜から表皮に入り込んでいるのかを区別するための病理組織の解析方法を考察した。この解析のための標本を現在製作中である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

M.Tanemura,H.Honda,A.Yoshida, Distribution of differentiated cells in a cells sheet under the lateral inhibition rule of differentiation. J.theor.Biol.153:287-300(1991)

本多久夫、種村正美、今山修平、細胞間の隙間を考えた幾何学モデル、日本生物物理学会第29回年会、1991.9/26-28
本多久夫、種村正美、今山修平、細胞に塊からのシート形成、第22回形の科学会シンポジウム 1991.11/16-17

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

平成2年度に行っている2次元での考察を,本年度は3次元に拡張する。ケルビン14面体が詰まった3次元空間でボロノイ多面体の中心距離を手掛りに,細胞巣がどのような多面体を経て発展していくかを検討する。年3回の打合せ会議(このうち1回は九州大学・医学部で実地調査)と1週間程度の電算機使用のための統数研滞在を1回,計画している。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

今山 修平

九州大学

種村 正美

統計数理研究所