平成222010)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

22−共研−2028

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

6

研究課題名

日米国際比較にみるいじめの問題

フリガナ

代表者氏名

ウエキ タケシ

植木 武

ローマ字

Takeshi Ueki

所属機関

共立女子短期大学

所属部局

生活科学科

職  名

教授

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

日米大学生を対象としたアンケート調査に於いて、前年度の解析から判明したことは、アメリカの家族の絆の方が日本の家族の絆よりずっと強く出た点である。日本の社会学者が知ったら大変に驚いたと推測するが、われわれの仮説が奇麗に証明されたことになった。
そこで、今度はその結果を踏まえて逆に考えてみることにした。つまり、そんなに日本の家族の絆はアメリカの家族の絆に比べて弱いのか…と。そう考えると、今ひとつわれわれを納得させてくれる理由が見つからない。確かに、ひと昔前の家族の絆は日本では大きく変貌してしまっている。しかし、それだからと言って、アメリカの家族の絆と比べて、それ程までに弱くなってしまったのかと自問すると、やはり、満足できる説明が思いつかない。
そこでわれわれが考えた事は、ある文化では、家族の絆を宗教上の理由で、家庭内の親子間で、学校の教師と生徒間で、映画やテレビというマスコミで強く強調する文化であり、ある文化では、家族の絆は自明の理として特に意識して強調しない文化があるのではないか…と。もちろん、われわれが想定しているのは、前者がアメリカ文化で、後者が日本文化である。そこで、われわれは被験者の語句回答(verbal response)は、被験者の理性心(rational mind)を主たる拠り所としており、これは必ずしも実際に人間行動(human behavior)に表出される実践心(practical mind)と同じではない、と考えた。そこで今回は実践心も解明したく、実践心が表出する人間行動を調べるために新たに仮説を考えた。
理性心は、「たてまえ心」とも言い換えることができ、実践心は「真心」とも言い換えられる。そこで今回の仮説は、「実践心が明瞭に表出する人間行動を追跡すれば、アメリカ人学生の家族の絆は、日本人学生の家族の絆と比べてそれほど明確に相違は出ないであろう。場合によっては、アンケート調査結果の逆転もあり得る」というものである。
そこでわれわれは、日本人学生には彼/彼女らの親が、「正月」と「お盆」に、実家へ帰省したかどうかを聞き、アメリカ人学生には彼/彼女らの親が、「イースター」と「クリスマス」に、実家へ帰省したかを聞くことにした。親も父母がいて、実家も最低2ヵ所あるわけであり、祖父・祖母が同居していたり近所に住んでいたり、あるいは遠くに住んでいる場合があるので、これらにウェートを付けて判断する予定である。
今年度は、日本人学生のみを対象としたプレテストを行った。共立女子大学生128名を対象に、正月とお盆に、親が実家へ訪問したかどうかの質問をしたところ、正月の質問でわからないという回答が3名、お盆の質問でわからないはゼロであった。ほとんどの学生が、親が実家を訪問したかどうかを知っていたので安心した。アメリカ人学生が日本人学生のように親の行動を知っているかどうかは予想できないが、今回の結果を見る限り、たぶん大丈夫であろう、という感触は得ることができた。正月とお盆に帰省したかどうか聞いた後で、それぞれ交通手段と片道何時間かかったかを聞き、それらにウェート付けようと考えている。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

植木武・山森芳郎・石橋義永・E. Wethington・Q. Wang・R. Edmondson
2008 「共立女子大学・コーネル大学共同プロジェクト 日米国際比較にみる家族の絆」
   共立女子大学総合文化研究所報告第14号.12頁.

植木武・山森芳郎・石橋義永・E. Wethington・Q. Wang・R. Edmondson
2009 「共立女子大学・コーネル大学共同プロジェクト 日米国際比較にみる家族の絆」
   共立女子大学総合文化研究所報告第15号.129-131頁.

植木武
2009 「日米学生比較」統計数理研究所共同利用実施報告書平成20年度.107-109頁.

植木武・山森芳郎・石橋義永・E. Wethington・Q. Wang・R. Edmondson
2009 「家族の絆といじめ問題?日米比較調査」第82回日本社会学会大会報告要旨集.122頁.

植木武・山森芳郎・石橋義永・吉野諒三・E. Wethington・Q. Wang・R. Edmondson
2010 『シンポジウム 日米比較 家族の絆といじめ問題』
   共立女子大学総合文化研究所.1-68頁〔日英両語〕.

植木武・山森芳郎・石橋義永・E. Wethington・Q. Wang・R. Edmondson
2010 「日米国際比較にみる家族の絆?大学生から見た家族への思い」
   共立女子大学総合文化研究所報告第16号.33,34頁.

植木武
2010 「日米学生比較: 家族の絆」統計数理研究所共同利用実施報告書平成21年度.129-131頁.

植木武・山森芳郎・石橋義永・吉野諒三・E. Wethington・Q. Wang・R. Edmondson
2011 「日米国際比較にみる家族の絆?大学生から見た家族への思い」
   共立女子大学総合文化研究所紀要第17号.101-141頁.

植木武・山森芳郎・石橋義永・E. Wethington・Q. Wang・R. Edmondson
2011 「日米国際比較にみる家族の絆?大学生からみた家族への思い」
   共立女子大学総合文化研究所報告第17号.27-29頁.

シンポジウム・公開講座
植木武・山森芳郎・石橋義永・R. Edmondson・小西將文(通訳)
2009 「シンポジウム 日米国際比較による家族の絆といじめ問題」
   共立女子大学総合文化研究所主催.7/24.

植木武
2009 「家族の絆といじめ問題?日米国際比較」
   共立女子大学・共立女子短期大学公開講座2009
   「世界の中の日本 環境・健康・人権・家族?4つの視点」9/26.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

吉野 諒三

統計数理研究所