平成242012)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

24−共研−1025

分野分類

統計数理研究所内分野分類

h

主要研究分野分類

3

研究課題名

バイオ・ナノ分子電子状態の統計化学に関する研究

フリガナ

代表者氏名

サトウ フミトシ

佐藤 文俊

ローマ字

Sato Fumitoshi

所属機関

東京大学

所属部局

生産技術研究所

職  名

教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 我々は、タンパク質のための密度汎関数(DF)法プログラムProteinDFを基に、タンパク質の統合的な量子化学計算シミュレーションシステムの開発を行っている。本研究では、活性中心近傍における生体触媒反応をはじめとする量子論に基づくタンパク質の反応・機能解析を行うことを目的とし、現在以下の研究に注力している。
1.タンパク質第一原理ダイナミクスとその統計処理の研究
2.タンパク質波動関数データベース作成と統計処理の研究
 本年度の成果は以下の通りであった。
1.タンパク質の第一原理ダイナミクス解析の足がかりとして、部分構造最適化法を実装した。グラジエント(ポテンシャルエネルギーの一次微分)を用いる方法として、最急降下法、共役勾配法、準ニュートン法(DFP法、BFGS法)を、グラジエントを用いない方法として、修正Powell法と滑降シンプレックス法をそれぞれ実装した。いくつかテスト計算を行った結果、BFGS法が有用な方法の一つであることがわかった。BFGS法にはヘッセ行列を近似的に組み立てる方法と、ヘッセ行列の逆行列を近似的に組み立てる方法がある。本研究では逆行列を近似する方法を採用した。これらの方法を組み合わせることで、コストの高いタンパク質全電子計算をなるべく行わずに,活性中心回りの部分構造最適化・遷移状態計算が達成できる条件を模索している。
2.大規模分子の密度汎関数計算をより高速に行うために,分子積分・数値積分演算の高速化と高度並列化を施している.大規模分子の全電子カノニカル分子軌道計算では、高速かつ高度に並列化された4中心2電子積分計算に加え、分散保持した大規模な密度行列に対する並列性能の良いアクセスが求められる。そこで、行列要素の参照が必要な分子積分計算を極力排除し、チューニングされている行列積により高速計算を達成するコレスキー分解法をProteinDFに実装した。巨大メモリを必要とするCD法であるが、その行列を縮約し、また大規模行列を分散保持することにより、その欠点を克服することができた。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

【学会発表】
T. Hirano, F. Sato, "Development of Canonical Molecular-Orbital Computational Program for Proteins: ProteinDF", The XIVth International Congress of Quantum Chemistry, Boulder, Colorado, USA.
平野敏行, 佐藤文俊, "CD法に基づくタンパク質全電子カノニカル分子軌道計算プログラムの開発", 第6回分子科学討論会2012東京

【ホームページ】
http://satolab.iis.u-tokyo.ac.jp/
http://www.ciss.iis.u-tokyo.ac.jp/

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究会の開催なし

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

阿部 敏彦

東京大学

上村 典子

東京大学

下向 智美

東京大学

千葉 貢治

東京大学

恒川 直樹

東京大学

平野 敏行

東京大学

松田 潤一

東京大学