平成91997)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

9−共研−59

専門分類

6

研究課題名

新しい理論波形計算手法を用いた高精度の3次元地球内部構造推定

フリガナ

代表者氏名

ゲラー ロバート ジェイ

Geller Robert, J.

ローマ字

所属機関

東京大学

所属部局

大学院理学系研究科

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

6 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

我々は最近, 理論波形計算の誤差を評価する理論を開発した. またこれに基づき誤差を最小にする離散化手法を開発した. 本研究では, この高精度の理論波形計算手法を用いて, 高精度の3次元地球内部(地震波速度)構造を推定する. また誤差評価の理論を用いて, 理論波形の誤差の大きさやふるまいを予測し, これがモデルの精度や解像度に与える影響を定量的に評価する.


本研究の目的は、我々が開発した高精度の理論地震波形の計算手法を応用し、高精度の3次元地球内部構造を推定することである。本年度はこれを行うための手法・ソフトウェア開発を完成させた。
3次元不均質地球構造を推定するためには、3次元不均質構造に対する理論波形計算を行う必要がある。我々が開発した新しい離散化手法(Geller & Takeuchi 1995, GJI)を3次元不均質構造の場合に対して拡張した(Cummins et al. 1997)。またこれを用いた理論波形計算ソフトウェアを開発した(Cummins et al. 1997; Takeuchi et al. 1997)。
ソフトウェアの精度・要する計算時間を見積もったところ、現実的な計算時間で高精度の内部構造推定(3000kmスケール全地球構造)が可能であることが確認された。
我々の開発した離散化手法は汎用的であり、あらゆる理論波形計算手法に応用できる。これまでは周波数領域の計算手法のみを扱っていたが、時間領域の計算手法にも拡張可能であることを示した(Geller & Takeuchi 1998)。
またローカルな基底関数を用いた計算手法だけでなく、グローバルな基底関数(Fourier基底; psudo-spectral method)を用いた計算手法にも応用可能であることを示した(Geller et al. 1998)。本年度の研究により、用いるデータ求めたい構造のスケールによらず、あらゆる構造推定を高精度に実施できるようになった。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Cummins P.R., Geller R.J. & Takeuchi N., Computation of complete synthetic seismograms for laterally heterogeneous model...., Geophys. J. Int., 130, 1-16.
Geller R.J. & Takeuchi N., Optimally accurate time domain finite difference scheme for the elastic equation of motion: 1-D case, Geophys. J. Int., in press.

Geller R.J, Takeuchi N. & Mizutani H., American Geophysical Union, 1997.12.8.
Takeuchi N., Cummins P.R. & Geller R.J., American Geophysical Union, 1997.12.8.
Geller R.J. & Takeuchi N., IASPEI 1997, 1997.8.22.
Takeuchi N., Cummins P.R. & Geller R.J., IASPEI 1997, 1997.8.22.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

地震波形データそのものをデータとして用いた地球内部地震波速度構造推定(波形インバージョン)では, 高精度の理論波形計算をすることが高精度のモデル推定に必要不可欠である. 我々の新しい計算手法は, 計算時間を増やさずに約30倍理論波形計算精度を改善でき, 従来よりも高精度のモデル推定ができる. 本研究ではIRIS(米国地震研究機関連合)の広帯域地震計の波形データ(30-400s)を用いて, 高精度の波形インバージョンを行う. 理論波形計算手法は我々が開発した高精度の手法を用いる. 地震波速度構造を鉛直方向に多項式スプライン, 水平方向に球面調和関数展開を用いてパラメータ化する. 鉛直方向には約200km, 水平方向には約3000km程度の解像度で推定する.また得られたモデルの統計的評価を行う. 我々の誤差評価の理論を用いて, 理論波形計算の誤差の大きさとふるまいを予測する. これを用いてモデルの不確定性を定量的に見積もる. この研究は統計数理研究所と共同に行うことにより, 円滑に研究遂行が可能になる.


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

伊藤 聡

統計数理研究所

大湊 隆雄

地質調査所

末次 大輔

建築研究所

竹内 希

東京大学大学院

田辺 國士

統計数理研究所