平成272015)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

27−共研−2004

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

近赤外線スペクトロスコピーを用いた反復経頭蓋磁気刺激法前後の重症度別による脳活動の検討

フリガナ

代表者氏名

キクチ センイチロウ

菊地 千一郎

ローマ字

Kikuchi Senichiro

所属機関

群馬大学大学院保健学研究科

所属部局

リハビリテーション学講座

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

15千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

遷延性うつ病の新たな治療法の選択肢として反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)が注目されているが、未解明な点も多い。治療経過中の脳活動を詳細に精査することは、より有効な治療法の解明や予後判定の手がかりに有用である。そのため、当院精神科病棟に入院した遷延性うつ病を対象にrTMSを行い、rTMS治療期間中に近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いて得られた経時的な生物学的知見と臨床症状評価尺度との対応関係を調べることにより今後のより有効な治療設定のてがかりとする。
 今回の研究で得られたNIRSデータの解析では、従来の精神科臨床領域で行われた手法、つまり刺激課題遂行中の酸素化ヘモグロビン波形の単純な積分値を視標とするのではなく、脳活動に由来する成分を、バンドパスフィルター処理を施した後に、一般線型モデルを用いて抽出してから評価を試みた。
 rTMSを施行した症例に、グループ解析を行い、各チャンネルごとのt値を求めた。左半球の25チャンネルと右半球の25チャンネルの左右それぞれの関心領域における平均t値を求めたところ、治療前は右関心領域優位であったが、治療に伴い左関心領域優位に変化していった。ちなみに、右関心領域の数値の変化は3.10->2.49->2.03->2.08と減少していった。一方左関心領域の数値の変化は2.59->2.69->2.08->2.41とほぼ横ばいであった。右関心領域の数値は減少していった一方、左関心領域の数値は横ばいだったために、結果として左右差が反転したことが判明した。これは左関心領域を賦活性刺激して、右関心領域を抑制性刺激した治療操作をある程度反映したものと思われる。予想に反して左関心領域の上昇が認められなかった。これは課題を反復することにより馴化が発生し、左の上昇を相殺したものと考えられた。
 さらに、私たちは重症度による脳活動に変化が見られるか、個別の例で検討を行った。全14例を、術前のHAM-D(うつ病評価尺度)により軽症群7例、重症群7例に分類し、それぞれの変化を求めた。すると軽症群では左関心領域に上昇が認められたものが3例、右関心領域に上昇が認められたものが4例であった。一方重症群では左関心領域に上昇が認められたものが4例で右関心領域に上昇が認められたものが3例であった。このことから、特に重症度による活動の変化には大きな違いは認められず同様に変化をもたらすという可能性が考えられた。
 今後は馴化による影響を考慮しプロトコールを改良した研究を遂行していきたいと考えている。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

本研究は平成27年6月4日大阪で行われた第111回日本精神神経学会学術総会で発表された。また、平成27年7月2日、大阪で行われた第17回日本ヒト脳機能マッピング学会でも発表された。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

本成果は
平成27年9月8日群馬大学保健学科作業療法学専攻卒業研究説明会(参加者30名程度)で、
平成28年2月6日前橋で行われた群馬精神科講演会(参加者10名程度)で、
平成28年3月29日群馬大学大学院保健学研究科主催ヒト脳機能計測研究会(参加者20名程度)で、
紹介された。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

石黒 真木夫

統計数理研究所

三分一 史和

統計数理研究所