平成91997)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

9−共研−94

専門分類

7

研究課題名

東洋医学の臨床評価法

フリガナ

代表者氏名

ツタニ キイチロウ

津谷 喜一郎

ローマ字

所属機関

東京医科歯科大学

所属部局

難治疾患研究所

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

8 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

漢方薬や鍼灸などのいわゆる「東洋医学」は数千年の歴史をもち現在でもなお広く用いられている。その使用の妥当性は基本的には歴史的に蓄積された情報を基にしているが、近代の保健サービスの中でそれが用いられる場合、保健行政から臨床における意志決定までの種々のレベルで「無作為比較試験」を代表とする近代的評価法などとどう適応させるかが問題となる。本研究では、近代的評価法の東洋医学の分野への導入の歴史的プロセス、現状、その問題点、さらに解決法について調査研究する。


第4年度の活動として、1997年11月3-5日に開催された米国国立衛生研究所(NIH)による鍼についての合意形成会議(Consensus Development Conference)の方法論の分析と、その結果である合意声明書とニュースリリースの日本語訳の作業がなされた。
Evidence-based Medicine (EBM) は、evidence のレベルを考え、ランダム化比較試験を基礎とし、その情報に基づき医療における意志決定をしようというものである。
そこではコクラン共同計画に代表される systematic review の方法をとり、関連する臨床試験を漏れなく集め、その質評価を行い、統計学的に統合し、判断するというプロセスがとられる。
今回の鍼についての合意形成会議では、鍼が、1)手術後および化学療法による吐き気と嘔吐、2)悪阻(つわり)、3)手術後の歯痛、に明確な evidence があるという結論であった。他にいくらか evidence の低いものとして腰痛や喘息など9つの疾患があげられた。
この作業プロセスにおいて、日本の今後の領域の活動について以下の3点が示唆的であった。
第1は、今回は Medline を中心にして文献検索が行われたが、日本を含めて非英語圏の論文があまり使われなかったこと、第2は、この種の evidence があまり多くなくむしろ参加者のコンセンサスのウェイトが大きい分野では、会議のプロセスの透明性(clarity)が保たれていることのよいモデルとなったこと、第3は、日本においてもこうした評価に耐えるだけの鍼の臨床試験がなされるべきであること、である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

(1)七堂利幸.有効率のピットホール(落とし穴).全日本鍼灸学会雑誌 1997; 47(2):79-85
(2)津谷喜一郎、他(訳).NIHパネルによる鍼に関する合意声明について.同誌 1997; 47(4):307-9
(3)川喜田健司、他(訳).米国国立衛生研究所(NIH)合意形成声明書.医道の日本 1998年2月号:16-25
(4)津谷喜一郎.集団に効くことと個人に効くこと.日本東洋医学雑誌 1998; 48(5):569-98

(1)川喜田健司、他.第46回全日本鍼灸学会学術大会・基礎班合同ワークショップ企画・司会.1997.6.9、東京

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

<研究計画> 1)漢方薬・鍼灸の各分野における、近代的評価法を用いた文献の収集とデータベースづくり 2)臨床試験論文の質評価のためのクライテリアの収集と分析 3)近代以降の日本における鍼灸に関する論争の経時的分析、いわゆる鍼に関する推計学論争に関して収集された文献にもとづきそのリストづくりと解析 4)研究プロジェクトの調整のための研究者間の打ち合わせと討論 <統計数理研究所との共同研究実施の必要性> 本研究は、臨床薬理学者、東洋医学の臨床家、教育者を中心に、東洋医学における実際のニーズにもとづいて発案されたものであるが、対象領域が統計学を用いたものであるため、この分野の基本的な資料を保有し、また経験と実績を持つ専門家との共同作業が必須である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

川喜田 健司

明治鍼灸大学

桑田 繁

くらしき作陽大学

佐藤 俊哉

統計数理研究所

七堂 利幸

大素堂

西條 一止

筑波技術短期大学

藤抜 龍治

浅ノ川鍼灸院

矢澤 一博

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