平成232011)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

23−共研−2032

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

事業所・企業統計の匿名化ミクロデータの作成実験と社会経済変動過程の解析への応用

フリガナ

代表者氏名

マツダ ヨシロウ

松田 芳郎

ローマ字

Matsuda Yoshiro

所属機関

青森公立大学

所属部局

経営経済学部

職  名

客員教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

549千円

研究参加者数

14 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

統計数理研究所の一般研究(2)で行われた「事業所・企業統計の匿名化ミクロデータの作成実験と社会経済変動過程の解析への応用」は、この研究に先行する日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(A)の共同研究(課題番号:17203017「法人企業統計調査と事業所・企業統計調査のミクロデータの統合新統計の編成と解析研究」(平成17?20年度)の研究成果の反省の上に、より広い研究者がミクロ統計データの解析が可能にするための条件の検討を行うことを目的としている。

日本の産業統計体系は経済センサス(平成21年経済センサス?基礎調査?および平成24年経済センサス?活動調査?)の実施によって大きく変わりつつある。しかし、このセンサスによって得られた結果が過去の産業分野別のセンサス諸統計とどのような整合性を持つかは、過去の諸統計を経済センサスの枠組みで再集計しなければ判らない。特にこれまでの日本の産業統計は統計調査単位を法人企業概念ではなく事業所概念で組み立てられていただけに、組替集計には発想を根本的に切り替えて、より新しい産業統計体系を編成す
る必要がある。そのためには既存諸統計の個票利用が不可欠である。新統計法(2009年に全面施行)によって匿名化個票データの学術的利用には大きな道が開かれた。しかし世帯統計とは異なり、事業所・企業の規模分布は正規分布で近似できず大規模の上層企業の匿名化データを編成するのは難しい。これまで各国ともに不可能視してきた大規模事業所・企業統計の匿名化データの技法を開発することが必要である。また、1980年代から日本の企業構造も大きく変貌してきており、政府の統計調査体系はそれに対応しきれないでいたが、平成8年(1996年)の総務省統計局の事業所統計調査の事業所・企業統計調査への改変はその第一歩であり、事業所の企業名による名寄せ集計や、親子企業名寄せ集計の実現につながった。しかし、事業所を調査単位とする他の産業統計調査や、企業を調査単位とする産業統計調査と組み合わせた集計の実現には未だ至っていない。政府の基幹統計(旧法の指定統計)は、当初より計画されていない集計表を作るのは難しく、行政とは異なる視点の集計表作成は実現してこない。新たに有料のオーダーメイド集計が認められたが、それでは試行錯誤は出来ない。匿名化ミクロデータはそれを可能にするだけでなく多変量解析にも道を開くものであり、匿名化データ作成技法を開発することは急務である。
新統計法に基づく個票利用申請によって個別統計調査の個票情報を利用し、完全照合の手法で複数の統計調査を組み合わせた新しい統計集計を行って解析し、その詳細集計結果を公開して学界の共有財産にすることは、将来の企業研究の基礎を構築するだけでなく、新経済センサスの結果と過去の産業別統計の時系列データとの比較を可能にすることができる。本研究は、既存産業諸統計のミクロデータの再集計によって試験的に経済センサスに接合しうる新しい産業統計体系を編成すると同時に、複数の省庁が所管する諸統計をリンクして新統計の開発を試み、そのうえで新統計法による匿名化データの作成技法の開発を行うことを目的としている。本研究の成果によって世帯関係の諸統計の匿名化に匹敵する企業統計の匿名化データ利用への道を開きたい。
 本年度はこの研究目標に従って、基盤研究(A)以来の研究者と新規参加の研究者のあいだに理解を含めるために、先行研究のレヴィユウから研究を出発させた。特に、経済産業省での匿名化データの作成実験の成果について検討した。また、今年度の研究成果の一部を統計数理研究所共同研究リポートとして年度末にまとめることができた。
 なお、本研究の進行に当たっては統計数理研究所の馬場康維特任教授と土屋隆裕准教授の綿密な協力の上になされた。また会場の設営その他では、元山斉特任研究員のお世話になった。記して謝意に替える。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

<論文発表>
松田芳郎「統計改革の今後?黄昏の国民国家を越えた統計体系のあり方?」
『日本統計学会誌』41(2)、pp.341-354、2012年。

統計数理研究所共同研究リポート282
『多国籍企業統計作成の意義と試み ?事業所・企業統計の匿名化ミクロデータの作成実験と社会経済変動過程の解析への応用?(中間報告)』統計数理研究所、2012年3月。

<学会発表>
古隅弘樹・松田芳郎
「経済産業省企業活動基本調査と事業所・企業統計の完全照合について」
2011年度統計関連学会連合大会(於:九州大学)、2011年9月

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

<第1回研究集会>
○6月27日(日) 13:00 - 15:00
場所:国際文化会館セミナー室
議題:データベースの編成状況にともなって使用可能なファイルの検討
出席者:松田、栗山、伊藤、古隅、松本、山本

○6月27日(月)
場所:統計数理研究所 八重洲サテライト
11:00 - 12:00 事務打ち合わせ
13:00 - 15:00 本年度の研究計画の確認とデータベースの説明
         年間スケジュールと報告書の印刷のスケジュール
出席者:松田、馬場、栗山、舟岡、伊藤、元山、古隅、松本

<第2回研究集会>
○10月23日(日) 11:00 - 16:00
場所:統計数理研究所 八重洲サテライト
テーマ:統計数理研究所共同研究の今後の運営に関して
出席者:松田、馬場、栗山、周防、椿、元山、古隅

<第3回研究集会>
○1月30日(月) 14:00 - 17:00
場所:統計数理研究所 八重洲サテライト
テーマ:個票情報使用における細目の検討と問題提起
出席者:松田、馬場、栗山、周防、伊藤、元山、古隅、松本、中川、中村


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

河野 秀孝

青森公立大学

栗山 規矩

石巻専修大学

今 喜典

青森公立大学

佐藤 整尚

統計数理研究所

周防 節雄

兵庫県立大学

土屋 隆裕

統計数理研究所

椿 広計

統計数理研究所

馬場 康維

統計数理研究所

舟岡 史雄

信州大学

古隅 弘樹

兵庫県立大学

松本 大吾

青森公立大学大学院

元山 斉

新領域融合研究センター

山本 俊

青森公立大学大学院