平成282016)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

28−共研−4202

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

3

研究課題名

メタアナリシスにおける方法論の新展開とその実践:用量反応・バイオマーカー・予測モデル

重点テーマ

次世代への健康科学

フリガナ

代表者氏名

タカハシ クニヒコ

高橋 邦彦

ローマ字

Takahashi Kunihiko

所属機関

名古屋大学

所属部局

大学院医学系研究科

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

175千円

研究参加者数

7 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

 薬剤の治療効果やリスク評価などにおいて,研究結果を統合して定量化するメタアナリシスの議論が古くから行われ発展してきた。特に複数の無作為化比較試験での治療効果を統合するメタアナリシスについては代表的な統計的方法とともにその手順が提案されており実際多くの研究が医学・疫学分野で行われている。そこで得られた結果は根拠に基づいた医療(EBM)において最高位の根拠と位置付けられている。また最近では,従来の方法を拡張し,より推定精度を高めるための統合方法や,多変量メタアナリシス,ネットワークメタアナリシス,個人毎のデータと文献に基づく要約データの同時分析など,メタアナリシスの新たな方法論の研究もすすめられてきている。
 一方,医学研究の分野でメタアナリシスの重要性が認識されてくるとともに,従来のメタアナリシスで想定されていない複雑な状況での適用の需要も高まってきている。しかしそれらの状況に適切な解析方法が開発されていないこともあり,時に適切とは言えない古典的な方法を強引に適用してしまった研究なども報告されている。
 そこで本研究では,従来のメタアナリシスの枠組みでは対処が困難な問題が多く介在する具体的な状況として,疫学分野における用量反応関係,バイオマーカーと予後の関係,予測モデルにおけるメタアナリシスに着目し,従来の方法を適用する際に発生する問題点を明らかにし,統計的により適切な解析方法の検討と提案を目的としながら研究を実施した。
 具体的には,分担者がそれぞれ「診断法・予後因子研究のメタアナリシスの方法」,「J型の用量反応曲線のメタアナリシスと疫学研究への適用」,「ロバストなメタアナリシス」,「連続共変量とそのカテゴリー化された変数が混在している場合の回帰係数の統合法」「カットオフ値の異なる予後因子研究のメタアナリシスにおける複数のバイオマーカーの比較」「経時測定データのメタアナリシスと栄養疫学研究への応用」などの幅広いテーマについて主体的研究や複数の分担者での共同研究として検討を行った。その実施については適宜分担者間で連携しながら議論を行うとともに,その経過や成果については全体の研究集会での報告・議論も行った。またその過程でまとめられた結果の一部については学術専門誌にも掲載することができた(下記,論文発表参照)。
 今後はこれらの成果について研究成果発表などの情報発信を行うとともに,さらにそれらの手法の発展や,実際問題や実データへの適用を目指して,引き続き検討や共同研究を実施していく予定である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

【論文発表】
・Sadashima E, Hattori S, Takahashi K (2016). Meta-analysis of prognostic studies of a biomarker with a study-specific cut-off value. Research Synthesis Methods 7: 402-419.

・Hattori S, Zhou XH (2016). Time-dependent summary receiver operating characteristics for meta-analyses of prognostic studies. Statistics in Medicine 35: 4746-4763.

・Hattori S, Zhou XH (2016). Evaluation of predictive capacities of biomarkers based on research synthesis. Statistics in Medicine 35: 4559-4572.

・Yoneoka D, Henmi M (2016). Synthesis of linear regression coefficients by recovering the within-study covariance matrix from summary statistics. Research Synthesis Method (in press).

【口頭発表】
・逸見昌之. ロジスティック回帰モデルのメタアナリシス-共変量の組合せが異なる場合-. 統計数理研究所公募型共同研究 重点テーマ2:次世代への健康科学共通公開研究集会. 2016年8月25日.

・貞嶋栄司. カットオフ値が異なる予後因子研究のメタアナリシス. 第15回久留米大学バイオ統計フォーラム. 2016年9月30日.

・服部聡. メタアナリシスに基づくバイオマーカーの評価. 第8回生物統計ネットワーク&科研費(基盤S)シンポジウム. 統計科学が切り拓く個別化医療:方法論・実践のフロンティア. 2017年3月27日.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

『メタアナリシスにおける方法論の新展開とその実践』研究集会
(2017年1月23日〜24日,宮崎県立看護大学,7名)

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

貞嶋 栄司

社会医療法人天神会新古賀病院

中尾 裕之

宮崎県立看護大学

服部 聡

久留米大学

逸見 昌之

統計数理研究所

米岡 大輔

St. Jude Children's Research Hospital