昭和611986)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

61−共研−23

専門分類

4

研究課題名

個人の経済社会的地位指標の試作

フリガナ

代表者氏名

サカモト ヨシユキ

坂元 慶行

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

種々の意識調査の今後の発展のためには,個人の経済社会的地位指標を作成し,態度・価値観との関連分析を可能にすることが重要である。しかるに,統計調査環境の悪化はこの指標に関わるデータの獲得を困難にしている。
この研究の目的は,60年度にひきつづき所内外のデータを収集・編集し,再分析を行うことによって,態度・価値観の説明に有効で,かつ,調査可能な経済社会的地位指標を試作する。


「日本人の国民性」研究の今後の展開のためには,単に価値観の変化を捉えるだけでなく,経済感覚や経済社会的地位に関する指標を補充し,これらの指標と価値観との相互依存関係の動態分析を実現することが重要である。そこで,60年度に引続き,当研究所の「価値意識調査」,日本消費経済研究所の「消費者の意識と行動調査」,余暇開発センターの「13カ国価値観調査」等,所内外の既存の調査データを収集・再分析し,態度・価値観の分析に有効で,かつ,調査可能な指標項目を選定するための作業を進めた。
今年度は,数種類の調査データに基づいて,経済社会的地位指標の候補とみなされる項目と価値観との依存関係の析出に注目し,いくつかの重要な知見を得た。たとえば,余暇開発センターの「13カ国価値観調査」(1979年調査)の分析では,経済社会的地位指標の候補の一つである「階層帰属意識」について,「これまで日本人の9割までが,『中流意識』であるといわれてきたが,今回の国際比較調査によれば,『中流意識』は世界的傾向であり,日本だけに特別にみられる現象ではない」とされてきた。しかしながら,この意識の内実は国によって大きく異なる。たとえば他の項目との関連を見ると,日本を除く12カ国においては,いずれも,『中流意識』は,274調査項目の中で,収入,職業,財産・耐久消費財の有無等,直接,経済的・社会的地位を示す指標と最も強い関連をもつ。これに対して,日本だけは,「どの程度生活に満足か」(1位)や「どの程度幸せと思うか」(2位)との関連が最も強く,収入(3位)を上回っている。さらに,4位以下にも生活の諸側面に対する満足度が並んでいる。この結果は,諸外国では経済社会的地位に関する意識が現実の地位に強く規定されるのに対して,日本においてはこのような意識項目が独自の意味をもつことを示唆している。このような結果は,昨年の結果や,従来の分析結果とも整合的であり,それ自体が「日本人の国民性」の一端を示すものとして興味あるものであると同時に,日本においては,事実的な地位指標だけではなく,満足感や階層意識のような感覚的な指標が無視できないことを示していると言えよう。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

昨年末に調査結果が利用可能になった「1985年社会階層と社会移動調査」(SSM調査委員会)の分析を含めて,これまでの研究成果の一部を同調査の調査結果報告書(1987年度末刊行予定)に発表する予定である。


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

種々の意識調査の今後の発展のためには,個人の経済社会的地位指標を作成し,態度・価値観との関連分析を可能にすることが重要である。しかるに,統計調査環境の悪化はこの指標に関わるデータの獲得を困難にしている。
この研究の目的は,60年度にひきつづき所内外のデータを収集・編集し,再分析を行うことによって,態度・価値観の説明に有効で,かつ,調査可能な経済社会的地位指標を試作する。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

石黒 真木夫

統計数理研究所

上村 淳三

日本経済研究センター

中村 隆

統計数理研究所

武藤 博道

日本経済研究センター