平成19（2007）年度　一般研究１実施報告書

 

課題番号

19−共研−1013

分野分類

統計数理研究所内分野分類

i

主要研究分野分類

4

研究課題名

励起反応ダイナミックスの理論開発と応用

フリガナ

代表者氏名

タケツグ　テツヤ

武次　徹也

ローマ字

Taketsugu Tetsuya

所属機関

北海道大学

所属部局

大学院理学研究院化学部門

職　　名

教授

 

 

研究目的と成果（経過）の概要

研究目的
多原子分子反応に対し、量子化学計算で得られるポテンシャル、ポテンシャル勾配に基づいて古典トラジェクトリーを計算する手法は、広い意味で第一原理分子動力学法とよばれる。本研究では、特に光反応や解離性再結合反応など、電子励起状態の関与する化学反応プロセスに対しても適用可能な第一原理分子動力学プログラムを開発する。任意の分子系に適用できる汎用的なプログラムを開発し、実験より提示される励起ダイナミックスの諸問題に適用して、これまでの分子理論では扱うことの出来なかった化学事象の解明を行うことを研究目的とする。具体的研究対象として、星間分子の生成過程の問題と生体内で重要となる励起状態プロトン移動反応を扱う。

研究経過の概要
これまで、星間空間における分子進化の過程で基本的反応として、HCNH+, H3O+, CH3+の解離性再結合反応に対して第一原理分子動力学計算を実施し、ダイナミクスや生成物分岐比を議論してきた。たとえばCH3+ + e- に対しては、CH2 + H / CH + H2 / CH + 2H / C + H + H2 の４種の解離生成物が考えられる。19年度は、CH3+の電子基底状態からCH3の解離性の励起状態に直接遷移するdirect processについてsimulationを行ったが、大半のtrajectoryがCH2 + Hとなる結果が得られた。地上で行われている実験では他の生成物もかなり大きな確率で生成しており、実験を再現するためにはリドベルグ状態を経由するindirect processについてもsimulationを行う必要がある。そこで20年度は、simulationにリドベルグ用の基底関数を導入し、indirect processにより生成物がどのように変化するかをダイナミクスの観点から調べる。

 

当該研究に関する情報源（論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等）

1) “Identification of the matrix shift: A fingerprint for neutral neon complex,” Y. Taketsugu, T. Noro, and T. Taketsugu, J. Phys. Chem. A, 112, 1018-1023 (2008).
2) “Ab initio prediction of noble-gas complexes,” Y. Taketsugu, T. Noro, and T. Taketsugu, Computing Letters, in press.
3) “Accurate ab initio electronic structure calculations of the stable helium complex: HeBeO,” T. Takayanagi, H. Motegi, Y. Taketsugu, and T. Taketsugu, Chem. Phys. Lett., 454, 1-6 (2008).
4) “An ab initio molecular dynamics study on the dissociative recombination reaction of HD2O+ + e-,” M. Kayanuma, T. Taketsugu, and K. Ishii, Theor. Chem. Accounts, in press.
5) Theoretical study of the simplest Xe-containing molecule: HXeH,” T. Takayanagi, T. Asakura, K. Takahashi, Y. Taketsugu, T. Taketsugu, and T. Noro, Chem. Phys. Lett., 446, 14-19 (2007).
6) “Ab initio study of KN,” K. Ishii, T. Taketsugu, and K. Yamashita, J. Chem. Phys., 127, 194307 (2007).
7) “Fermi resonance in CO2: a combined electronic coupled-cluster and vibrational configuration-interaction prediction,” V. Rodriguez-Garcia, S. Hirata, K. Yagi, K. Hirao, T. Taketsugu, I. Schweigert, and M. Tasumi, J. Chem. Phys., 126, 124303 (2007).

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

山下　智志

統計数理研究所