平成252013)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

25−共研−1004

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

4

研究課題名

海洋データ同化システムに用いる誤差分散共分散行列の作成に関する研究(4)

フリガナ

代表者氏名

フジイ ヨウスケ

藤井 陽介

ローマ字

Fujii Yosuke

所属機関

気象庁気象研究所

所属部局

海洋・地球化学研究部第2研究室

職  名

主任研究官

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

海洋データ同化システムとは、海洋の状態変化を予測するモデルと海洋観測データから、現実の海洋変動の再現を行うシステムである。モデルと観測の情報を統計的に最適な方法で融合させるためには、観測データ及び、モデルの予報誤差についての正則な誤差分散共分散行列を必要とする。しかし、海洋データ同化システムで扱う観測データやモデルの予報変数の数は非常に多く、観測データやモデルのシミュレーション結果について、正則な誤差分散共分散行列を作成するのに十分な数のサンプルを用意するのは困難である。そこで、統計数理研究所では、グラフィカルモデルを用いて少ないサンプル数から近似的に正則な誤差分散共分散行列を作成する方法を開発し、さらに観測データ数が巨大な場合でも適応できるように改良を行った。そこで、本研究では、上記の手法を、気象庁格子点海面水温データの誤差共分散行列の作成に適用し、気象研究所海洋データ同化システムにおいて、その有用性について検討する。

本研究では、1960年から2007年の1日値、全17532サンプルについてこの手法を適応した。まず準備計算として、空間解像度1度のデータを2度間隔に間引いて分散共分散行列を推定した。その結果、データ点間の直接の相互作用の範囲を4近傍、8近傍、12近傍と仮定した場合に推定値を得ることができた。4近傍とはあるデータ点の東西南北方向の各隣の点を指し、8近傍はそれら4点に北東・北西・南東・南西の斜めの点を加えたものである。12近傍はさらに東西南北方向に2つ離れた点までの直接の相互作用を加味したものである。準備計算で妥当な推定値が得られたことを確認したので、1度間隔でのデータ点に対する分散共分散行列の推定を試みた。しかし、最も簡単な4近傍相互作用の仮定の下でも計算の実行時間がかかりすぎ、最終的に推定値を得ることはできなかった。海面高度の格子点データ(1992年から2002年の全364サンプル)については推定が可能であったことから、推定するパラメータの数が同じ場合でも、サンプル数が大きくなると反復回数が著しく増大することが示唆された。今後の課題として、全17532サンプルをいくつかの部分に分け、少ないサンプルを用いた分散共分散行列の推定を組み合わせることで、全サンプルに対する推定値を効率的に得る手法を開発する必要がある。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

上野(2014):グラフベース・アンサンブルカルマンフィルタ. 第7回気象庁数値モデル研究会・第4回データ同化ワークショップ. 気象庁(東京都千代田区), 2014年1月8日.

藤井, 碓氷, 丹羽(2014): 変分法データ同化と正定値対称昇列. 政策研究大学院大学(東京都港区), 2014年1月15日.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

特になし。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

上野 玄太

統計数理研究所

碓氷 典久

気象庁気象研究所

蒲地 政文

気象庁気象研究所

土谷 隆

政策研究大学院大学