平成202008)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

20−共研−2009

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

4

研究課題名

点過程解析に基づく余震活動の時空間モデリング

フリガナ

代表者氏名

イイオ ヨシヒサ

飯尾 能久

ローマ字

IIO Yoshihisa

所属機関

京都大学

所属部局

防災研究所 地震予知研究センター

職  名

教授

配分経費

研究費

55千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 多くの大地震(即ち本震)は余震を伴う。その余震活動の時空間モデリングを行うことが本研究の目的である。特に、余震活動が非常に盛んな、本震断層近傍で起きたものをモデル化することを主眼とする。
 現在のところ、この種の研究として、大地震、即ち本震の断層運動によって生じる静的な応力変化と摩擦構成則と呼ばれる物理則(以下、「構成則」)に基づくモデリングが試みられている(例えば、Toda and Stein [2003, JGR])。但し、解析対象として主に扱われている余震は、本震断層から若干離れたところに起きたもので、断層近傍で起きたものは解析対象外とすることが多い。静的な応力変化を計算する際に、本震の滑りの空間分布が必要となる。これは、地震波や地殻変動データに基づいて得られた既存のものを用いるが、その空間分解能はあまり高くない。それゆえ、それに基づいて計算された静的な応力変化も細かい空間分解能がなく、断層近傍で起きた余震の細かい空間分布に十分対応出来ない。これが、断層近傍で起きた余震を解析に取り込めない理由である。
 そこで、余震活動から、滑りの空間分布を逆に求めることを試みた。即ち、「構成則」から期待される余震の空間分布が現実の観測データに最もよく合うよう、本震の滑り分布を最適化する。最適化の際には、滑り分布が空間的に滑らかに変動するような制約を事前分布として課すことで、いわゆるベイズ的なモデリングをマルコフ連鎖モンテカルロ法により行った。本来、制約の強さはABICなどで決めるべきであるが、計算時間の関係上、困難であった。そこで、得られた解から推定される本震のマグニチュードが、実際のものと合うような制約の強さを解として選択することとした。
 この手法を2005年に起きた宮城県沖地震に適用した。得られた滑り分布を、従来用いられている地震波形に基づく解析から得られた他研究の結果と比較したところ、大きな違いがなく、本研究で用いた手法の有効性を示すことが出来た。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

[学会発表]
岩田貴樹・遠田晋次・尾形良彦, 余震の空間分布から求めた2005年宮城沖地震のすべり分布, 日本地球惑星科学連合2008年大会, 幕張メッセ国際会議場, 千葉市, 2008年5月.

岩田貴樹・遠田晋次・尾形良彦, 余震の空間分布から求めた大地震の滑り分布, 東京大学地震研究所共同利用研究集会「地震活動の物理・統計モデルと発生予測」,東京大学地震研究所, 東京, 2008年7月.

Iwata, T., Toda, S. and Ogata, Y., A spatial slip distribution of the 2005 Miyagi-oki earthquake derived from its aftershock activity and the rate- and state friction law, ヨーロッパ科学財団(ESF)研究集会 「New Challenges In Earthquake Dynamics: Observing And Modelling A Multi-Scale System」, Obergurgl University Centre, Obergurgl, オーストリア共和国, 2008年10月.

岩田貴樹, ベイズモデルによる大地震の滑り分布推定:余震の空間分布をデータとした解析, 科学研究費補助金基盤研究(A)「時空間現象データに対する統計科学モデルの構築及び解析に関する組織的研究」研究集会, 沖縄県青年会館, 那覇市, 2008年11月.

Iwata, T., Toda, S. and Ogata, Y., The method to estimate a slip distribution of a large earthquake based on the spatial distribution of its aftershocks and rate- and state friction law: Further development, American Geophysical Union 2008 fall meeting, モスコーン国際会議場, サンフランシスコ, アメリカ合衆国, 2008年12月.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

(なし)

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

岩田 貴樹

早稲田大学

尾形 良彦

統計数理研究所

遠田 晋次

産業技術総合研究所