平成252013)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

25−共研−2045

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

1

研究課題名

統計理論に基づく数理的妥当性を有したメンバシップ関数構築法の開発

フリガナ

代表者氏名

ハスイケ タカシ

蓮池 隆

ローマ字

Hasuike Takashi

所属機関

大阪大学大学院

所属部局

情報科学研究科

職  名

助教

配分経費

研究費

40千円

旅 費

100千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

情報科学技術の普及・発展に伴い,実社会の膨大かつ多次元の言語情報や画像情報などの非数値情報処理,人間社会における個々の感性情報の有効利用手法の開発が求められている.特に人が意思決定を行う際には,合理的かつ客観的な意思決定を行うためにも,非数値情報解釈における個人感性の数理化手法が必要不可欠となる.
これまでこの数理化手法として,統計理論においては主観確率を利用したベイズ統計が利用されている一方で,個々のアンケート結果や感性を直接グラフとして表現させることで得られるメンバシップ関数を利用による数理化手法も研究されている.後者の手法においては,個人が設定した集合に対し,ある事象が完全所属,完全非所属の場合は1,0で決定し,その他の状況においては0から1の中間値を設定することにより,感性の数理化を行っている.
しかしメンバシップ関数を利用した場合,表現された関数が本当に個人の感性を表現しているのか,特に意思決定においては,関数を恣意的に変化させることで妥当な意思決定を導出できないのではないかといった,数理的・客観的側面での妥当性の保証に関する疑問が存在し,これらを解決するような手法は未だ存在せず,解決に導くための基礎研究もあまり進められていないのが現状である.
我々のこれまでの基礎調査および平成24年度の共同利用研究から,メンバシップ関数構築法の基礎概念と,ベイズ確率における主観確率の構成法と類似性の考察,情報エントロピーを利用した数理的保証した新たなメンバシップ関数構築法を開発してきた.しかし情報エントロピーをそのまま直接適用しても,メンバシップ関数として妥当と考えられる条件を満たさないことがわかってきた.
そこで平成25年度では,様々なタイプのメンバシップ関数を統一的に扱うことのできる標準関数としてS-curve型のメンバシップ関数を導入し,意思決定者が自信をもって設定可能と考えられる,メンバシップ値が0または1の範囲設定を有効活用,それ以外の部分は極力恣意性を排除するために情報エントロピーの概念を導入したメンバシップ関数構築法を提案した.この成果は論文誌に掲載され,基礎理論の一翼を担うことができている.
今後は,S-curve型のメンバシップ関数で表現できない関数も多々あることから,やはりどんな形であれメンバシップ関数を想定せず,かつ意思決定者が自信をもって設定可能な部分以外の恣意性を排除する形でのより客観的妥当性を有するメンバシップ関数の構築法を開発していく予定である.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Takashi Hasuike, Hideki Katagiri, and Hiroe Tsubaki, "Constructing an appropriate membership function integrating fuzzy Shannon entropy and human's interval estimation", ICIC Express Letters, 8(3), pp. 809-813, 2014.

蓮池隆, 片桐英樹, 椿広計, "数理計画問題における妥当なメンバシップ関数構築法の一考察", 第29回ファジィシステムシンポジウム(FSS2013), 大阪国際大学, 2013年9月9日.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

本研究課題単独での開催ではないが,2013年11月12日に統数研にて,ワークショップ「行動と現象との不確かさを巡って」(参加人数:10名)にて,本共同研究の成果報告を行った.

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

片桐 英樹

広島大学大学院

椿 広計

統計数理研究所