平成282016)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

28−共研−2041

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

3

研究課題名

疾患異質性の推定と判別解析への応用

フリガナ

代表者氏名

マツイ シゲユキ

松井 茂之

ローマ字

Matsui Shigeyuki

所属機関

名古屋大学

所属部局

医学系研究科生物統計学分野

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

62千円

研究参加者数

6 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

がんを対象として疾患異質性を考慮したデータ解析の枠組みの構築を試みる.具体的には,がん患者及び健常者の遺伝子発現量データを対象に,データの外れ値の構造(cancer outlier構造,以下CO構造)をモデルベースに推定し,遺伝子・サンプルの二方向クラスタリングにより,似た挙動を示すがん関連遺伝子のクラスタの同定と,同じ遺伝子サブセットの寄与で発がんしているがんサブグループの同定を試みる.その上で,推定されたデータ構造に基づいたがんの判別解析法を構成する.また,別のアプローチとして,CO構造を反映したがん・健常者間の乖離の度合いを表す統計量を構成し,ノンパラメトリックに判別を行う方法についても検討する.

平成28年度は,パラメトリック法である入れ子型混合モデルによる二方向クラスタリング法を開発し,様々なCO構造を想定した数値実験を通して提案法の基本性能を確認した.また,がんの判別に対して,いくつかの判別ルールを検討した.その上で,Fisher線形判別,正則化判別,SVMなどの標準的な判別法との比較を行った結果,遺伝的異質性の度合いが高いと提案法の性能が優れるが,そうでない場合は従来法が優れることがわかった.
一方,ノンパラメトリック法については,全遺伝子の分位点の分布と一様分布との乖離度を測るいくつかの指標について検討したが,パラメトリック法と同様,従来の判別法とほぼ同程度の性能であった.
以上の結果は,パラメトリック,ノンパラメトリックを問わず,提案法は異質性構造の検出に特化した方法であり,比較的異質性は低いものの判別に役立つ強いシグナルをもつ遺伝子の重みを相対的に小さくすることによるものと考えられる.検出した異質性構造の大きさ・関連の強さ等を考慮したadaptiveな方法の開発などが今後の課題として考えられる.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

学会発表:
Tomonori Oura, Kota Matsui, Shigeyuki Matsui. Cancer outlier analysis based on a nested two-way clustering. XXVIIIth International Biometric Conference, Contributed Session, July 11, 2016, Victoria.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

なし

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

小森 理

福井大学

西野 穣

名古屋大学大学院医学系研究科

野間 久史

統計数理研究所

松井 孝太

名古屋大学

盛 啓太

静岡県立静岡がんセンター