平成202008)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

20−共研−2047

分野分類

統計数理研究所内分野分類

f

主要研究分野分類

5

研究課題名

微細溝加工を施した鉛直平板を流れ落ちる液膜流の非線形ダイナミクス

フリガナ

代表者氏名

アダチ タカヒロ

足立 高弘

ローマ字

Adachi Takahiro

所属機関

秋田大学

所属部局

工学資源学部機械工学科

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

130千円

研究参加者数

4 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究では,エネルギーの有効利用や環境保全対策の一つとして注目されている吸収式冷凍機に着目する. この吸収式冷凍機は,排熱を利用できるので地球環境にもやさしいという利点がある. 一方で,熱源駆動の熱交換システムであるため装置の大型化や起動性能が悪いなどの欠点を持ち,さらなる改良が求められている. 

吸収式冷凍機システムの中で,吸収器の改良はシステムの小型化,低コスト化に繋がるため重要である. そこで本研究では,プレート式吸収器に着目し,鉛直プレートを流下する液膜流の熱輸送特性を数値計算と実験により明らかにする。鉛直平板上を流れる薄い液膜流れを介した平板と周囲との熱輸送では,固体壁に接していない液膜流れの側では自由表面が形成されており容易に波が発生する。このような波動現象や液膜を介した熱輸送現象は,非線形現象の代表的な例である。自由表面で生じた波が不安定な場合には,初めは小さな振幅の波でも時間の経過とともに振幅は大きくなり,最後には液膜が破断することがある。また,ある程度大きな有限振幅の波にはカオスのような不規則的な変動パターンが液膜表面に現れる場合があり,統計的な扱いが必要になる。工学的には,このような流れの乱れを人為的に誘起して伝熱を促進させる目的から鉛直平板上に微細加工を施すことが行われる。

本研究では,平滑面や微細加工を施した平板上を流れる液膜流について数値計算と実験を行う。波状液膜の周期や振動数あるいは熱伝達に関するデータを集め,得られた結果の統計数理解析を行うことで液膜流の表面物性および熱輸送特性と微細加工のピッチ等との関係を明らかにすることが目的である。

現在までのところ,いくつかの異なるピッチを持つ微細な凹凸付き平板について,流れ場と温度場の計算を行っており,流れのパターンと熱伝達特性との関係を明らかにしつつある。溝形状を有する鉛直平板に対して,液膜流が平板に沿って流下すると,時間経過とともに液膜は溝内部に進入し,溝内部が液膜で充満する.溝のピッチを変更した場合には, 溝のピッチが大きいと液膜内部に充満する液量が増大し,それに伴って温度境界層が増大することになり,熱伝達が低下することが明らかになった。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1) 足立高弘,人見健太,宮崎大輔:VOF法による気液二相流れと熱伝達の数値シミュレーション,東北大学情報シナジーセンター大規模科学計算システム広報 SENAC 38巻 (2005) 37-48.
2) Takahiro Adachi : Heat Transfer of Liquid Film Flow Falling down Vertical Grooved Plates, Proceedings of the 16th International Symposium on Transport Phenomena(Aug. 29- Sep. 1, 2005, Prague, Czech Republic).
3) 人見健太・足立高弘:矩形溝を有する平板を鉛直落下する液膜の流れと熱伝達.日本機械学会熱工学コンファレンス2005講演論文集(2005)pp.191-192.
4) 足立高弘,人見健太:VOF法による気液二相流れと熱伝達の数値シミュレーション(第2報)
東北大学情報シナジーセンター大規模科学計算システム広報 SENAC 40巻 (2007) 57-67.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

浅地 野衣

秋田大学

佐藤 直也

秋田大学

土谷 隆

統計数理研究所