平成182006)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

18−共研−6003

専門分類

7

研究課題名

診療プロセスの詳細データに基づく名医療のモデリング

重点テーマ

生物統計学の深化と展開

フリガナ

代表者氏名

アカザワ コウヘイ

赤澤 宏平

ローマ字

Kohei Akazawa

所属機関

新潟大学

所属部局

医歯学総合病院医療情報部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

50千円

旅 費

100千円

研究参加者数

4 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

1塩基多型(single nucleotide polymorphism, SNP)やマイクロサテライトマーカー等のDNA多型データを用いたcase-control相関解析は、疾患感受性遺伝子を見出すツールとして頻繁に用いられている。特に、SNPベースのcase-control相関解析は、患者群と健常群とを用い、どのSNPが患者群と有意に関連しているのかを遺伝統計学的に調べ、最終的には有意なSNPの近傍に位置する疾患感受性遺伝子を同定する方法である。この分野では、より少ない検査回数で疾患感受性遺伝子に関与するSNPを検出する方法が議論されてきた。Two-Stage Association Study(TSAS)もそのひとつで、コストから逆算される限られた症例数をFirst stage (Stage1)とSecond stage (Stage2)に分け、Stage1である程度有意なSNPをスクリーニングした後、Stage2で感受性遺伝子かどうかの確証的な検定を行なう。TSASを使うことによりSNPの検査回数を大幅に減らすことが可能となる。たとえば、利用できる全症例数が1,000例(疾患群500例、健常群500例)あるとする。Stage1に500例(疾患群250例、健常群250例)を投入し有意水準0.1の検定を行なうと、Stage1とStage2を合わせたSNPの総検査回数はone-stage association studyの全数調査の55%程度ですむ。一方、TSASは全症例数を分割して検定を行なうので、それぞれの検出力は低下してしまい、真の疾患感受性遺伝子を取りこぼしてしまう確率も増加する。
本研究では、(1)TSASによるCase-control相関解析の統計学的な定式化、(2)発表者らが経験したアルツハイマー病のSNP解析データを用いた疾患感受性遺伝子探索の過程、(3)TSASのいくつかの解析方法の検出力の比較、を考察した。具体的には、Two-stage association studyでの検定方法として、従来の方法(Replication-based analysis)と2006年2月に提唱されたJoint analysisを取り上げ、症例数の配分割合、有意水準、対立遺伝子の割合、genotypeの発生頻度モデル等を変化させたときの検出力を検討した。
理論的な考察ならびにシミュレーション結果から、種々の条件下でRBA法に比べてJA法の方が高い検出力をもつことが示された。アルツハイマー病のSNPsデータでの検証により、これらの結果が立証された反面、Stage1とStage2でのSNPsの疾患への影響度が大きく異なることが起こりうること、ある特定領域のSNPsが有意なリスクSNPsとして取り出される傾向にあり、独立性を仮定した多重比較検定では対応できないこと、複数の遺伝子や生活環境要因の相互作用要因が評価できていないことが問題点として指摘された。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Kuwano R, Miyashita A, Arai H, Asada T, Imagawa M, Shoji M, Higuchi S, Urakami K, Kakita A, Takahashi H, Tsukie T, Toyabe S, Akazawa K, Kanazawa I, Ihara Y: Dynamin-binding protein gene on chromosome 10q is associated with late-onset Alzheimer's disease. Human Molecular Genetics 15(13): 2170-2182, 2006.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

小林 久里子

新潟大学

鳥谷部 真一

新潟大学

柳本 武美

統計数理研究所