平成242012)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

24−共研−2036

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

生態系サービス評価に関わる土地利用管理最適化システムの構築

フリガナ

代表者氏名

ヨシモト アツシ

吉本 敦

ローマ字

Yoshimoto Atsushi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

数理・推論研究系

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 近年,森林資源の持つ多面的な機能(生態系サービス)に対する認識の高まりとともに,森林資源の利用に関する意思決定は非常に複雑化している.管理が各機能の供給に及ぼす影響を定量化し,各機能間のトレードオフを可視化することは,複雑な意思決定をサポートする上で有効な情報提供に繋がる.特に,森林エコツーリズムや森林におけるレクリエーションへの関心は,年々高まっており,見晴らし台等の適切な配置や森林散策のルート設計がツーリズム収入へ多大な影響を及ぼすことを踏まえると,森林景観に対する視覚的な「質」の評価と,そのような景観に対する個人の選好の把握は,森林の美的景観を維持し,その機能を効果的に発揮できる景観管理計画の策定に欠かせない.
 このように,森林の美的景観および景観に対する選好の研究への関心は高まりつつあるが,実際に森林景観管理計画および,管理の意思決定に応用できる研究はまだ発展途上である.特に,様々な森林管理の空間配置が美的景観に及ぼす影響を予測し,かつ,望ましい美的景観を達成するために必要な管理方法を明らかにできるようなモデルはまだない.本研究では,美的景観に関するアンケート調査や,リモートセンシング技術などを活用した森林の美的景観評価モデルとオペレーションズリサーチの分野で以前から取り組まれてきた組み合わせ最適化問題を結合させ,最適なレクリエーションパスの探索やそれに向けた管理について評価分析のできるシステムの構築を行った.具体的には,全ての都市を総移動コストが最小になるように巡回するルートの探索問題である,巡回セールスマン問題を応用して,限られた時間内に景観美指標の高い林地を訪問できる最適ルートの探索モデルを開発した.このようなモデルは,美的景観が高い地域を効率的に巡回できるルート開拓に対して有効な情報を提供できるものであると考えられる.さらに,上記の最適ルート探索モデルを土地管理利用の景観美への影響を考慮に入れたモデルへの拡張を行った.
ここで開発した美的景観評価モデルは,森林の美的景観の質と管理により制御される森林の属性(種構成等)を関連付けるもので,巡回ルート最適化モデルと結合することで,様々な政策あるいは景観管理シナリオが美的景観の質へ及ぼす影響を定量的に評価できる.
本研究で検討するモデルは,伐採・間伐などの森林管理処方の適用の結果として生じる美的景観を予測するだけでなく,目標とすべき美的景観への森林管理シナリオの作成にも役立てられる.更に,ここで提案したモデルが構築されれば,従来の木材生産と美的景観のトレードオフの定量化を含め,レクリエーションあるいは,ツーリズムの提供も視野に入れた多目的森林管理計画の策定に対して,有効な情報提供が可能となる.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Yoshimoto A, Surovy; P, Konoshima M, Surova D, Optimal Touristic Management Considering Forest Visual Impression (International Symposium on A New Era of Forest Management for Ecosystem Services, Seoul, South Korea)

Yoshimoto A, Surovy P, Surova D, Optimal Landuse Management for Ecotourism Considering Forest Visual Impression (Sustainable Forest Ecosystem Management in Rapidly Changing World, IIlan, Taiwan)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

なし

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

加茂 憲一

札幌医科大学

木島 真志

琉球大学