平成292017)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

29−共研−4101

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

8

研究課題名

森林における地理的な要因を考察した自然災害リスクの評価

重点テーマ

リスク科学のフロンティア

フリガナ

代表者氏名

カモ ケンイチ

加茂 憲一

ローマ字

Kamo Ken-ichi

所属機関

札幌医科大学

所属部局

医療人育成センター

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

197千円

研究参加者数

6 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究においては、森林において発生する自然災害発生のメカニズムを統計モデルにより表現し、リスクを定量化することによるリスク管理および施業に対する活用を試みる。その結果は、危険度の高い地域における植林を自制するといった形でマネージメント戦略において活用することが可能である。本研究においては様々なリスク要因の中から特に地理的な要因に着目し、それが災害リスクにどのような影響を与えているのか、設定した統計モデルが妥当なものであるかどうかについて考察した。
本研究においては、2004年に富山県において発生した冠雪害に関連して採取されたデータを用いた解析を行った。冠雪害発生の有無をバイナリするモデルに対してはロジスティック回帰モデル、冠雪害の内訳を詳細にカテゴリ化する場合は多項ロジット回帰モデルを設定し、変数選択による最適モデルを探索した。ロジスティック回帰による結果として選択されたリスク要因のうち地理的要因に関連するものは、標高・横断面係数・縦断面係数・地下開度・斜面方位が選択され、地形の凹性でリスクが高いことが分かった。凹型地形と斜面方位については、基本的に風の影響を受けないことが共通点である。風の影響については、雪質や気象状態に応じてリスクを軽減する場合と上昇させる場合の両方が存在することが先行研究において報告されているが、今回は風を受けないことがリスク上昇の原因であった。多項ロジットに関しては3種類の害(根返り・幹折れ・幹曲がり)を設定したところ、変数選択に関しては同様の結果が得られたが、種類に応じた細かな結果を得ることができた。根返りが地下部、幹折れと幹曲がりが地上部であると考えられ、例えば横断面係数に関しては、根返りにおいてリスクを軽減する推定量であった一方で、幹折れと幹曲がりに関してはリスクを増大させる推定量が得られた。以上の解析においては、立木の特性に関しても変数として導入しており、その点に関する補正もなされているものと見做すことができる。ロジスティック回帰モデルと多項ロジット回帰モデルの比較のために感度分析を行うと、特異度はロジスティック・多項ロジット共に80.82%であったが、感度に関してはロジスティックで80.54%であったのに対して、多項ロジットでは86.70%であったため、冠雪害をカテゴリ化した詳細解析による予測性能の向上が認められる結果であった。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文発表
K.Kamo, T.Tonda, K.Satoh: Growth analysis using nuisance baseline. FORMATH, 16, 1-10, doi: 10.15684/formath.16.002, 2017.

学会発表
T.Tonda, K.Kamo, K.Satoh. Gamma regression model with nuisance baseline for forest growth data. International symposium on sustainable forest ecosystem management : 2017年8月30日(ポスター):韓国
加茂憲一, 冨田哲治, 吉本敦. 統計学からみた森林におけるリスク管理, 日本森林学会大会:2018年3月26-29日(発表27日:口演):高知

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究会の開催はありません。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

木島 真志

琉球大学

佐藤 健一

広島大学

冨田 哲治

県立広島大学

吉本 敦

統計数理研究所