平成101998)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

10−共研−97

専門分類

9

研究課題名

大気汚染の発生源寄与率を推定する統計的方法の研究

フリガナ

代表者氏名

サトウ マナブ

佐藤 学

ローマ字

所属機関

広島大学

所属部局

工学部

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

人体に悪い影響を慢性的に与えるといわれている大気中の粒子状物質について、その発生源を推定してそれぞれの寄与率を統計的に見積もる方法を研究する。従来の研究では、発生源から観測地点までの物質の変化の構造やモデルに含まれる係数が決定論的に論じられていた。統計的モデルを導入して解析することによって、データに何を仮定したかが明確になり、また、推定誤差の評価も可能となる。


広島県の内陸に位置し局地汚染の少ない庄原市で測定した降水成分データを,(1)イオン成分の発生源を同定する。(2)イオン成分濃度と総観規模の気象条件との関連を把握する。
という2つの事柄を目的として解析した。用いたデータは,ひと雨毎に捕集した9種類の主要イオン(水素イオン,硫酸イオン,硝酸イオン,塩化物イオン,アンモニウムイオン,カルシウムイオン,ナトリウムイオン,マグネシウムイオン,カリウムイオン)の濃度および降水量である。硫酸イオンとカルシウムイオンは,濃度を海塩の寄与を除いた“非海塩由来濃度”に変換して解析を進めた。
水素イオンを除くと,すべてのイオンの降水量重み付き平均濃度は,冬季に高く夏季に低かった。各イオンの月別沈着量を算出し,その相関行列に主成分分析を適用した。第3主成分までで全変動の約90%を説明できた。得られた因子負荷量をバリマックス回転することにより,3つの因子は酸成分,海塩成分,土壌成分を表していると解釈できた。
上層(850 hPa面)の風向・風速データを用いて,ひと雨毎に庄原市を起点とするバックトラジェクトリーを作成し,イオン濃度との関連を調べた。長距離輸送するとみなされている非海塩由来硫酸イオンの平均濃度は,アジア大陸の北部から飛来した空気塊が最も高かった。高濃度(上側10%)のほとんどは,大陸方面からの降水量が少ない空気塊のときに出現していた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

SETO Sinya 他, Analysis of precipitation chemistry at a rural site in Hiroshima prefecture, Japan, Atmospheric Environment, 掲載予定.
OTANI Akira, SATO Manabu, Examination of the response bias to the expressions of the questionnaire on SDS, The Japanese Journal of Behaviormetrics, 投稿中.
KANEFUJI Koji 他,Estimation for a scale parameter with known coefficient of variation, Statistical Papers, 39(1998), 377-388.


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

(1)主要な発生源の個数を決定する問題に対して、統計的検定法の導出を試みたりAICの適用について考えてみたい。(2)微量の元素を測定することが技術的に困難であることから、観測値が「検出限界以下であった」と報告されてくることが少なくない。そのため、従来は値をゼロとみなして取り扱うことが多かった。ここでは打切分布や切断分布を考慮したモデルを構築して、データが持つ情報をより多く活用することを試みたい。統計数理研究所は第一線の研究者を擁しており、計算機資源にも恵まれている。そのため、共同研究を行うことで多くの成果を期待しうる。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

大瀧 慈

広島大学

金藤 浩司

統計数理研究所

瀬戸 信也

広島県保健環境センター

橋本 哲男

統計数理研究所