平成81996)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

8−共研−57

専門分類

6

研究課題名

Genetic Algorithm およびSimulated Annealing 法の地震学への応用

フリガナ

代表者氏名

ナカニシ イチロウ

中西 一郎

ローマ字

所属機関

京都大学

所属部局

大学院理学研究科

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

地震学における多パラメータの非線形最適化問題(moment tensor densityの3次元的分布またはhigher crder moment teusorの決定、観測点補正値の決定、最短時間経路法(Dijkstra Algorithm)による非線形地震波トモグラフィー等)への上記アルゴリズムの応用。未知パラメータは数100 個。


Genetic Algorithm を次の地震学における3問題に応用した。 1)ローカル地震計アレイ(京都市地震防災強震計アレイ)、2)兵庫県南部地震の震源過程のインバージョン、3)微動観測からのS波速度構造の決定。
以下この順に研究成果を説明する。1)京都市の強震計アレイに対して、震源決定の数値実験と実際のデータを用いた震源決定を行った。GAを用いることにより、最小二乗法では困難な、非ガウス型誤差分布(例えば、Jeffreysの誤差分布)、L1ノルムを用いた震源決定を簡単に行うことができることを示した。特に震源の深さの決定を精度良く行うことが出来た。
2)従来の震源過程の研究ではあらかじめ断層面、さらに断層面上での破壊の開始時間を仮定して、断層面上のモーメントの開放量を推定していた。本研究ではこの2つの拘束条件をなくすことを試みた。未知のパラメータ量が非常に増えるので、現在のところ上の2つの拘束条件をはずすところまでは行っていない。片方の拘束条件をはずしたインバージョンを行った。三次元的なモーメントの開放のインバージョンにより、断層面(=モーメント開放の大きな面の分布)を推定出来るところまで来た。
3)微動観測データのインバージョンでは、個体群探索分岐型遺伝的アルゴリズムを用いた。この方法により従来のGAでは困難な多峰性問題も扱うことが出来る。微動観測データからS波速度構造を精度良く決定することが可能であることが明らかになった。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1. Muramatsu, Y. and I. Nakanishi, Hypocenter Determination by use of Genetic Algorithm, Journal of Natural Disaster Science, submitted.
2. Cho, I., Y. Muramatsu, R. Kobayashi, I. Nakanishi, K. Oike, Y. Suzuki, T. Fujiwara, Analysis of the data recorded by network system for observation of earthquake response over Kyoto area: Application to the earthquake at the Kyoto city on July 18, 1996 (Mjma 3.6), Journal of Natural Disaster Science,submitted.
3. レーリー波の分散データからS波速度構造を推定するインバージョン問題への個体群探索分岐型遺伝的アルゴリズムの適用 −微動探査法に関連して−、物理探査、投稿中.

1. 村松容子・中西一郎、遺伝的アルゴリズムを用いた震源決定、地震学会、平成9年3月
2. 長郁夫・中西一郎、震源過程と断層形状の同時推定:モーメントテンソル場の3次元時空分布インバージョンの1995年兵庫県南部地震への適用、地震学会、平成9年9月
3. 長郁夫、中西一郎、S. Ling、岡田広、微動を用いたS波速度構造の決定に対する個体群分岐型遺伝的アルゴリズムの適用、地震学会、平成9年9月

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

上記のような地震学における非線形問題へGenetic AlgorithmおよびSimulated Annealing法を応用し、これらの方法が地震学に有効かどうかを検討する。簡単な問題に対してはすでに使用しており、アメリカ地球物理学連合のGeophysical Research Letlersに印刷されている。現在は兵庫県南部地震の断層破壊過程の研究に用いている。これまでのところGoldbeは(1989)のSimpleGAを用いており、まだ問題点のあることがわかってきた。SAについてはまだ用いたことはない。コントロールパラメータ(例えばmutationの確率)をどのような根拠にもとづいて決めるのか、そして同じ問題をSAで解くとどのような結果になるかについて統数研の専門家と議論し、robustなものにしたい。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

長 郁夫

京都大学大学院

樋口 知之

統計数理研究所