平成クオ1989)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

クオ−共研−40

専門分類

5

研究課題名

統計力学的手法による強い相関を持つ系の研究

フリガナ

代表者氏名

ミヤシタ セイジ

宮下 精二

ローマ字

所属機関

京都大学

所属部局

教養部

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

6 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

相互作用をする多体系の協力現象を統計力学的手法,主にモンテカルロ法を用いて調べ,そのゆらぎの性質を研究する。特に協力状態では諸物理量間に強い相関が生じ,相転移など物理的に興味深い振舞いが見られる。これらの現象を数値的に調べる際にデータのよい統計処理方法を用いることは極めて重要である。本共同研究では競合系,量子系など物理的に興味深い系の性質を研究するとともにそのデータ処理法の開発にもあたりたい


宮下は量子モンテカルロ法のデータ処理に必要な,外〓プログラムを完成し,それを量子モンテカルロ法におけるエルゴード問題の検定等に応用した。
量子スピン系のモンテカルロ法は最近非常に重要な方法になって来ているが,その中で最も標準的な方法である鈴木−トロッタ公式を用いる方法ではいわゆる“トロッタ数”に関する外〓が必要である。従来,この外〓はグラフ上で視察によって行なわれて来たが,それを統計理論に基づくシステマティクな方法によって,解析できるようにした。この新しいプログラムにより大データ処理が必要な大がかりなシミュレーションの解析が容易になった。具体的には,異方的ハイゼンベルク反強磁性体(スピン1/2,正方格子)の異方性の変化に伴なう対称性の破れの研究(文献1),や非磁性原子によって希釈されたハイゼンベルク反強磁性体(同上)の秩序化の不純物効果の研究(文献2)のデータ解析に大いに役立った。また上述の方法に固有なモンテカルロ法のエルゴード問題がそこで用いるフリップ(大域的なもの)との関係で調べられたが,その際の解析にも大いに役立った(文献3)。
この解析法ではいくつの異なったトロッタ数のデータを用いるのが良いか,またその時いくつの未定パラメタを用いるのが良いのかについては試行錯誤の段階であるがこの点についてもシステマティクに解析できるような方法を開発中である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1)S.Miyashita:in Quantum Simulations of Condensed Matter Phenomena,ed.by J.D.Doll & J.E.Gubernatis,World Scientific PP.228−237
2)J.Behre,S.Miyashita and H.J.Mikeska:J.Phys.A submited
3)S.Miyashita:(同1))PP238−242


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究目的の項でも述べたようにデータの効率良い高精度の解析法の開発が目的の一つであり,統計数理研究所の専門的な知識の導入・利用を期待するため共同研究としての実施は是非必要である。具体的な研究テーマとしては,ゆらぎの性質が多様で種々の性質を見せる競合する相互作用を持つ系(フラストレート系),特に三角格子反強磁性体及びその層状三次元(六方晶)体の相転移と中間相の性質に関する研究,及び低次元における量子ゆらぎの様子の量子モンテカルロ法による研究,特に二次元XY模型やハイゼンベルク模型の性質を調べる。鈴木・トロッタ公式による分解を用いる場合,量子モンテカルロ法では近似に関するある種の外挿が必要となるが,それに伴なう誤差評価はデータ解析上最も複雑でかつ困難な部分である。これに対する処法の開発にもあたりたい。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

伊藤 伸泰

東京大学大学院

香取 真理

中央大学

川崎 辰夫

京都大学

高須 昌子

金沢大学

田村 義保

統計数理研究所