平成142002)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

14−共研−2039

専門分類

7

研究課題名

類洞の立体構造に影響を及ぼす肝細胞の形状---その統計的解析

フリガナ

代表者氏名

タネムラ マサハル

種村 正美

ローマ字

Tanemura, Masaharu

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

多面体であるヒトの肝細胞と肝癌細胞について、個々の細胞の面数の分布および類洞(微小血管網)に
接する面数を実際のヒト肝臓組織に対して観察して求め、それらの結果をもとにコンピュータ実験を行い、
類洞の立体構造に関して正常肝臓と肝癌との間で差を生じさせているメカニズムを解明することを目的とし
て研究を行っている。
 一昨年度の共同研究経費で購入した Rhodamine によって標識した Phalloidin を反応させて、ヒト肝硬変
組織をレーザー共焦点顕微鏡で観察して120枚の画像を作成し、昨年度の経費で導入したソフトウェア
Adobe Photoshop によって画像処理し、より精密なデータを構築する準備を行った。そして、現在ではそれら
の画像が free の画像表示ソフトウェアである Confocal Assistant Version 4.02 によって、パーソナル・
コンピュータの上で連続表示ができるようになった(末吉、清水)。
 清水は、肝臓における類洞のネットワーク構造を格子型モデルとして構築するアプローチを昨年度に引き続
いて追求し、今年度は動脈と静脈について、空間を等間隔の立方格子に分けて、二つのアルゴリズムを用いて、
肝臓の血管系を構築して、二つのアルゴリズムを比較した。モデルの評価関数として、終末点(末端の枝)の
数(多い方が優れている)およびエネルギー消費量(少ない方が優れている)を用いた結果、二つのアルゴリ
ズムがそれぞれの評価関数に対して対等な結果(一方の評価が優れていれば、他方の評価が劣る)を示すこと
が分かった(高木、西川、清水(2002))。
 種村は、ヒト肝臓組織に関する上記の連続表示された画像をコンピュータで眺めることによって示唆され
る観察結果から、類洞のネットワーク構造に関して、ボロノイ多面体を用いた3次元モデルの構築を具体的に
開始した。そこでは、3次元空間にランダムに散布した点配置に対してボロノイ多面体による分割を行い、
それを初期条件として、各多面体の重心に点を移動させるという操作を何回か繰り返していくと、最終的に
観察されたヒト肝臓組織の多面体構造と極めて良く類似した、ある種の規則的な多面体分割の構造が得られ
る。そこで、この構造を元にして類洞ネットワークを構築するというアイデアに達した(Tanemura,2003)。
また、このモデルから正常肝と肝癌とで現れる幾何学的構造の違いが表現できる見通しも得られた。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

● 論文
高木隆司、西川哲治、清水英男(2002)。「肝臓血管系のコンピュータによる構成」,
形の科学会誌,Vol.17,pp.25-26。
Tanemura,M.(2003)."Some statistics of Voronoi-Delaunay tessellations of point
Systems",Abstract for ISM Symposium 'Statistics,Combinatorics and Geometry',
March 20-22,2003,I.S.M.,p.25
清水英男、末吉徳芳、種村正美(2000)。「肝硬変の類洞網はなぜ粗いのか?」,
形の科学会誌,Vol.15,pp.202-203。
● 学会発表
R.Takaki,H.Kitaoka,T.Nishikawa,H.Kaneko and H.Shimizu(2002)."Formation of
Branching systems in human organs",Int.Conference on Morphogenesis and
Pattern Formation in Biological Systems,Chubu Univ.,Kasugai,Sep.24-27,2002.
高木隆司、西川哲治、清水英男(2002)。「肝臓血管系のコンピュータによる構成」,
第53回形の科学シンポジウム,中部大学,春日井市,2002年6月14-15日
清水英男、末吉徳芳、種村正美(2001)。「肝硬変の類洞網はなぜ粗いのか?」,
第50回形の科学シンポジウム,中央大学,東京,2001年3月16-17日

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

清水 英男

湘南鎌倉総合病院

末吉 徳芳

順天堂大学