平成202008)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

20−共研−1002

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

ニューロンの位相応答曲線の統計的推定

フリガナ

代表者氏名

イバ ユキト

伊庭 幸人

ローマ字

Yukito Iba

所属機関

統計数理研究所

所属部局

モデリング研究系

職  名

准教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

リミットサイクルを持つ非線形振動子に対して摂動的に外力を加えた場合の反応を表わす曲線を位相応答曲線と呼ぶ.ニューロンを非線形振動子とみなしたとき,その位相応答曲線は,それを特徴づける基本的な量と考えられる.そこで,ニューロンの位相応答曲線を実験データから推定することが試みられているが,雑音が大きいため,統計的処理が重要となる.
これまでは三角級数などを用いたパラメトリックなモデルにより推定が行なわれていたが,最近になって,位相応答曲線を離散スプラインで表現し,平滑化事前分布を用いた経験ベイズ法で推定する先行研究(太田・青西)があらわれた.しかしながら,これは縦軸(摂動による位相のシフト量)についてのみ雑音を考えた通常の回帰の形で推定を行っており,その点で不満がある.
 われわれのこれまでの研究によれば,ニューロンモデルのシミュレーションに外部雑音を加えた場合,「発火周期」に相当する量が確率的に変動することが認められる.これは位相応答の測定においては,横軸・縦軸の測定データに互いに相関のある誤差が生じることに相当している.
このような偶然変動に対処するため,本研究では,横軸・縦軸に相関のある雑音が存在する場合の階層ベイズモデルを開発した.このモデルに対してMCMCを実装したところ,収束が不良であることが判明したが,レプリカ交換モンテカルロ法(パラレル・テンパリング法)を用いることで安定した推定が可能になった.計算時間の増大には並列化によって対処することができた.
予備的な結果によれば,開発したモデルはシミュレーションデータに対して,誤差構造を考慮しないモデルよりも平均2乗誤差の意味で優れた結果を示す.今後は,より詳しい性能のチェックと共に,実データでのテストを行う予定である.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Statistical estimation of phase response curves and application in neural science
9th World Conference of the International Society for Bayesian Analysis (ISBA2008)
Hamilton Island Australia 2008.7.23

中江健,伊庭幸人,青柳富誌生
周期の揺らぎを考慮した位相応答曲線の統計的推定
日本物理学会秋季大会 盛岡 2008.9.21

中江健,伊庭幸人,青柳富誌生
レプリカ交換モンテカルロ法による位相応答曲線の統計的推定
第11回情報論的学習理論ワークショップ (IBIS2008) 仙台 2008.10.30

中江 健,伊庭 幸人,青柳 富誌生
レプリカモンテカルロ法による位相応答曲線の統計的推定
第3回日本統計学会春季集会 東京 2009.3.6

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

青柳 富誌生

京都大学

中江 健

京都大学