平成101998)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

10−共研−53

専門分類

7

研究課題名

ベイズモデルを用いた家畜ゲノム上の遺伝子位置の予測法の開発

フリガナ

代表者氏名

ワダ ヤスヒコ

和田 康彦

ローマ字

所属機関

農林水産省畜産試験場

所属部局

育種部

職  名

主任研究官

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

ヒトやマウス、家畜を含む多くの動物において、遺伝子地図の作成が実施されており、その結果、それぞれの動物種間で、染色体上での遺伝子の配置が部分的に保存されていることが明らかとなってきた。そこで、家畜の遺伝子地図の効率的な作成のために、遺伝子地図作成で先行しているヒトやマウスの情報を用いて、家畜ゲノム上でまだマッピングされていない遺伝子について、ベイズモデルを用いてその家畜ゲノム上での位置を予測する手法を開発する。


多くの哺乳動物において種間で染色体上での遺伝子の配置が部分的に保存されていることが明らかとなってきたので、遺伝子地図作成で先行しているヒトやマウスの情報を用いて、家畜のゲノム上にまだマッピングされていない遺伝子について、その遺伝子がのっているであろう染色体を推定する手法を開発し、WWWを通して利用できるシステムとモバイルエージェントを用いて利用するシステムを実装した。
開発した手法は、まずマウスと他の種との間で共通にマッピングされている遺伝子を抽出し、それらの遺伝子がマッピングされている染色体を調べて、非線形モデルを用いてそれら2種間の染色体間の転座確率を推定する。次に推定された転座確率を用いたマウスから他の種への転座先を予測するベイズモデルを構築し、このモデルを用いて調べたい遺伝子の転座の事後確率を染色体ごとに算出するものである。
この手法の有効性を検証するために、マウスでマッピングされていてさらにヒトおよびブタでマッピングされている遺伝子について転座染色体ごとの事後確率を算出し、実際にマッピングされている染色体と最大の事後確率を持つ染色体が同じかどうかをチェックした。
その結果、ヒトでは事後確率50%以上の場合にはすべて正しく予測できていたが、事後確率10%未満の場合には正しく予測できたのは1.5%であった。これらの結果より、今回開発した手法は単に転座染色体を予測するのみならず、その予測誤差についても利用者に示唆を与えることができる手法であると考えられた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Y.Wada,H.Kishino,N.Kashiwagi and H.Yasue,"Mobile Agent System for Animal
Genome Database",The Ninth Workshop on Genome Informatics,1998.12.10

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

まず2種間の転座確率を推定する非線形モデルを構築し、その式をもとに転座先を予測するベイズモデルを開発する。このモデルを実際のデータに当てはめて事後確率を算出し、予測の精度と事後確率の妥当性について検討する。次に、このモデルを多種間の転座先予測モデルに拡張することを検討する。申請者らはすでに8-共研A-86「遺伝子地図情報に関する統計数理学的研究」として、比較遺伝子地図を検索、表示するシステムを開発している。また、統計数理研究所では、最尤法を用いた分子系統樹の作成方法についての研究が盛んに実施されており、この分野では世界をリードする研究所のひとつである。また、本共同研究への参加者の1人である岸野は統計数理研究所に在籍当時、この研究を積極的に推進しており、統計数理研究所との共同研究として実施することにより、より大きな成果が期待される。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

柏木 宣久

統計数理研究所

岸野 洋久

東京大学