平成61994)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

6−共研−71

専門分類

7

研究課題名

蛋白質の進化過程におけるアミノ酸置換確率の推定

フリガナ

代表者氏名

ハシモト テツオ

橋本 哲男

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

アミノ酸相互の置換確率(遷移確率行列)を推定することは、蛋白質の進化過程を確率モデルとして記述してデータ解析を行うのにあたり必要不可欠である。すなわち、蛋白質の相同性解析、分子系統樹の推定などのデータ解析の基礎となるものである。本研究は、最近新しいデータをもとに、現実のアミノ酸置換の過程を良く表現する遷移行列を推定することを目的とする。


蛋白質の進化過程におけるアミノ酸置換確率を推定し、相同性探査、分子系統樹の推定などの分子進化学的解析を行なう際の確率モデルとして適用することを目標に研究を進めている。本年度も昨年度までに引き続き、置換確率推定に至るための集計を行なう準備段階として、各種保存的蛋白質のアライメントを行なった。
対象とした保存的蛋白質は、DNA dependent RNA polymerase、elongation factor 1α、elongation factor 2、F0F1-ATPase、V-ATPase、各種のリボソーム蛋白質、各種の熱ショック蛋白質、aminoacyl-tRNA synthetase、などである。これらの一次構造データを、毎週更新される遺伝情報データベースを探索することによって収集、整理する作業を継続した。新しいデータが入力される毎に、真核生物、古細菌、真正細菌の三大生物群、および葉緑体、ミトコンドリアなどのオルガネラ、のそれぞれについて、アライメントを更新した。
三大生物群およびオルガネラを通して存在する保存的蛋白質については、生物群内部での変異はアミノ酸置換が主であるのに対して、生物群間では大幅な挿入、欠失が生じている。現在取り扱っている蛋白質の中では、elongation factor 1α および 2 が他に比べてより保存的であることが明らかであり、全生物界を通した分子系統学的解析を行なうような場合にはこれらの蛋白質が適当であると考えられる。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

前年度までの研究において、主として翻訳、転写に関わる各種の保存的蛋白質に関するアライメントが構築されている。本年度は、翻訳、転写関連蛋白質の残り、およびエネルギー代謝関連蛋白質のアライメントを構築する。その際、多重アライメントに関するいくつかの自動アルゴリズムを比較検討し、それらの方法論上の問題点を整理する。
一方、翻訳関連蛋白質についてはかなりの量のデータのアライメントが、既に完成しているため、これらを用いて具体的な集計作業を行い、遷移確率行列を推定する。さらに、推定された行列が、Dayhoffら、Jonesらの行列とどの程度異なるかを比較検討する。データの収集、整理、解析を効率よく進めるために、統計数理研究所における共同研究が必要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

足立 淳

オックスフォード大学

岸野 洋久

東京大学

長谷川 政美

統計数理研究所