平成192007)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

19−共研−2008

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

クローナル植物における繁殖特性と遺伝構造の空間解析

フリガナ

代表者氏名

オオハラ マサシ

大原 雅

ローマ字

OHARA Masashi

所属機関

北海道大学

所属部局

大学院地球環境科学研究院生態保全学分野

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

140千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

<研究目的>
本研究では、種子繁殖とともにクローン成長を行うクローナル植物スズランの生態的ならびに遺伝的データを対象に、統計数理学的手法を用いて
(1)集団の時空間的構造と個体群動態の解析における新たな手法を開発すること
(2)モデルとシミュレーションを用いて、クローンの成長方向と拡大過程を解明すること
を目的としている。
 <経過>
野外調査:2003年より継続している野外調査
6月22日−24日:測定コドラート・トランセクトプロット内のシュートの
追跡モニタリング調査
      9月26日−30日:プロット内の地下部掘り起こし
遺伝分析: 6月25日−26日:葉サンプルの採取
7月10日−20日:遺伝分析及び解析
数理解析: 8月27日−29日:ジェネットの空間的な拡大過程の推定に関する予備解析
1月13日−15日:ジェネット成長の解析方法を開発
2月25日−27日:空間的変化を考慮した動態モデルの確立
 <成果>
 クローン成長由来の新ラメットのサイズは、種子実生に比べてはるかに大きく、親ラメットのサイズに近いことを反映し、ジェネットを構成するラメットのサイズクラス構造は正規的な分布を示していた。そこで正規分布モデルを当てはめ、ジェネットごとに経年のサイズクラス構造を比較したところ、経年変化パターンはジェネット間で異なっていた。この変化をもたらす要因について一般化線形モデルを用いて検証した結果、ジェネットの成長に対してラメット成長と開花・新規ラメット率が、ラメット成長にはサイズ・開花・年変動が影響していることがわかった。さらに、これらの値をfine-scaleのジェネットグループごとにノンパラメトリックに推定し、AICによりグループ間で比較したところ、これらの動態に関するパラメータの値は、同一ジェネット内でも分布場所の異なるラメット間で、また同所的に存在しているラメットでもジェネット間で異なっていることが明らかとなった。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

<論文発表>
(1) Araki K. and Ohara M.「Reproductive demography of ramets and gents in a rhizomatous clonal plant Convallaria keiskei」Journal of Plant Research 121: 147-154, 2008.
(2) 島谷健一郎・河原崎里子・荒木希和子「野生植物の生活史研究における統計モデルの活用−多年生林床草本の空間的個体群動態解析−」統計数理学研究所共同研究リポート 219: 1-65, 2008.

<学会発表>
(1) 荒木希和子「クローナル植物スズランの繁殖特性と集団の維持機構」
第52回日本植物学会北海道支部大会, 2007年9月.
(2) 荒木希和子「クローナル植物スズランの繁殖特性と集団の維持機構」
第27回進化植物研究会,2008年3月.
(3) 荒木希和子・島谷健一郎・大原雅「クローナル植物スズランにおけるラメットの成長・更新と
ジェネット成長の関係」第55回日本生態学会,福岡,2008年3月.
(4) 荒木希和子「クローナル植物スズランの繁殖特性と集団の維持機構」大塚賞受賞講演,2008年3月.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

荒木 希和子

北海道大学

島谷 健一郎

統計数理研究所