平成302018)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

30−共研−2035

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

ミクロデータの利活用における安全性の基準に関する実証研究

フリガナ

代表者氏名

イトウ シンスケ

伊藤 伸介

ローマ字

Ito Shinsuke

所属機関

中央大学

所属部局

経済学部

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究の目的は、わが国における世帯・人口系のデータだけでなく事業所・企業系のデータを対象に、諸外国で適用されている各種匿名化技法の適用可能性を追究するだけでなく、個票データから算出された記述統計量や集計結果表といった分析結果を対象に、個別具体的に安全性の基準に関する定量的な評価研究を行うことである。そのために、本研究では、人口センサス等のミクロデータに含まれる個体情報の秘密保護に対する法制度的・技術的措置に関する現状把握を踏まえ、個票データに基づく分析結果に対する安全性の基準に関する実証研究の一環として、国勢調査や経済センサスといった政府統計の個票データに基づいて得られた集計表や回帰分析の結果に関する安全性の基準を定量的に明らかにすることを指向している。
 2018年度に関しては、研究代表者の伊藤と共同研究者の南が、Privacy in Statistical Databases 2018(2018年9月26〜28日、於:スペイン、バレンシア)に参加し、研究発表を行った。伊藤の研究発表に関しては、国勢調査を例に、政府統計のミクロデータに対する攪乱的手法の1つであるスワッピング(daya swapping)やPRAM(=Post RAndomization Methods)の適用可能性を検討し、スワッピングを適用しても、侵略者の様々な戦略を想定して個体が特定されるリスクを想定した場合に、PRAMを適切に適用できれば、個体の特定リスクを低減することが可能であることを実証的に確認した。また、南の研究発表においては、集計表の秘匿に関してこれまで議論されてきたセル秘匿問題(Cell Suppre)について、情報量損失の低減を可能にする周辺分布に含まれるセルの秘匿方法に関する提案を行った。さらに、Privacy in Statistical Databases 2018において、海外の統計作成部局の実務担当者、ミクロデータと集計表の秘匿処理に関する研究者と情報交換を行い、ミクロデータの安全な利活用の方向性について議論を行った。
 2019年度においては、わが国で利用可能な政府統計の個票データに様々な匿名化技法を適用した場合の匿名化ミクロデータの秘匿性と有用性の評価基準を模索するために、匿名化技法の相違による露見リスクを定量的に評価する方法や、匿名化ミクロデータの個票データからの情報量損失の計測方法のさらなる検討を行う。さらに、これらの研究結果に基づいて、秘匿性と有用性の両面から、世帯・人口系あるいは事業所・企業系のミクロデータにおいて有効な匿名化技法を追究していきたい。また、わが国における事後チェック型の調査票情報の利用可能性を追究するために、principle-based approachに基づく集計表や回帰分析の結果に関する秘匿性のチェックの方法についてもさらなる検討を進めていきたい。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Shinsuke Ito, Toru Yoshitake, Ryo Kikuchi, Fumika Akutsu. Comparative Study of the Effectiveness of Perturbative Methods for Creating Official Microdata in Japan. Josep Domingo-Ferrer and Francisco Montes (eds.) Privacy in Statistical Databases: UNESCO Chair in Data Privacy, International Conference, PSD 2018, Valencia, Spain, September 26-28, 2018, Proceedings (Lecture Notes in Computer Science), July, 2018, Springer,pp.200-214, 査読有
http://doi.org/10.1007/978-3-319-99771-1_14
Kazuhiro Minami, Yutaka Abe. Extended Cell Suppression Problem Towards Better Data Utility. Paper presented at Privacy in Statistical Databases 2018, Valencia, Spain, September 2018,査読有

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

2018年度は研究会を開催していない。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

南 和宏

統計数理研究所

村田 磨理子

公益財団法人 統計情報研究開発センター