平成122000)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

12−共研−2035

専門分類

7

研究課題名

人体の各領域における皮膚表面形態の法則性の検討

フリガナ

代表者氏名

イマヤマ シュウヘイ

今山 修平

ローマ字

Imayama, Shuhei

所属機関

九州大学

所属部局

医学部

職  名

講師

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

人体の各領域における皮膚表面形態の法則性の検討
今山修平 九州大学医学部皮膚科教室
種村正美 統計数理研究所調査実験解析研究系
本多久夫 兵庫大学経済情報学部
はじめに
 本多・種村らによる表皮についての数理
生物学は、以下を強く示唆するようになった。
すなわち、?表皮構造の大部分を角層が決定
していること、?その決定メカニズムを介し
て、角層は表皮下の結合組織の構築をも(か
なりの程度に)支配していること、従って、
?角層を修飾することにより、少なくとも真
皮乳頭層までは修飾可能なことである。そこ
で本年度は、塗り薬で角層を修飾することに
より、皮膚表面の模様(たとえば小ジワ)を
消せることを証明して発表した。
表皮の構築に果たす角層の役割
(1)基底層は凸凹なのに角層表面は平坦
 顕微鏡下の表皮は、角層面は平坦である
のに対して基底層は(乳頭状に)凸凹してい
る。一般に細胞の増殖・分化は規則的に制御
されていると考えられているので、表皮にお
いても、分裂した細胞が規則的に分化・上行
していくのであれば、基底面の凹凸が角層表
面にも反映されて凸凹になると思われる。し
かし実際の角層表面は平坦である(図)。
(2)パラドックスを可能にする動的平衡
 表皮の厚さや基底面の凹凸に拠らず、角
層表面が平坦であるということは、細胞供給
(基底細胞)側が構築を規定しているという
一般論を表皮に導入するのではなく、逆に、
表皮では脱落する(角層)側が表皮構築を支
配していると考える方が無理がない。そもそ
も皮膚では外的条件によって脱落細胞数が決
定されるのであるから、供給側が制御するこ
とが、どだい無理である。
 何らかの事情により角層からの脱落数が
増えた場合には、それに応じて供給数が増え
る。増えた基底細胞を収めるためには基底面
の面積が増えるしかなく、こうして結合組織
との境界面が凹凸になるという訳である。そ
の結果、結合組織との接合面が増えることに
なり栄養供給も亢進する。
 上記のような表皮細胞の(一見奇妙な)
動的平衡、すなわち基底面でのスタート地点
が大きく違っても最後には同じ平面に達して
しまうという均衡系を説明したのがランダム
配列モデル(本多・種村)である。
(3)角層の細胞脱落は外的に決まる
 外界に接している角層細胞の脱落は、外
的に決定される。外的に脱落量が変動するに
も拘らず、表皮の形や厚さが一定に保たれて
いるのは、脱落(角層)分が直ちに補われる
からである。表皮細胞は基底細胞の分裂によ
って供給されているので、皮膚の形が変わら
ないということは、(1)脱落したと同じ数の細
胞が、(2)脱落した部分に補われる、という動
的平衡のメカニズムが存在するからである。
言い換えると、(1)基底側からの供給と(2)表
皮内での細胞の表面への移動は、自動的に制
御されているからである。
角層が表皮構築を決定・維持
(1)角層が皮膚の表面張力を負担
 体表面では表面張力により、角層細胞は
四方八方へと水平に伸張されていて、あたか
も6角形(正確には14面体)のタイルを敷き
詰めたようにみえる。個々の角層細胞は12の
側面で隣接する細胞と接着して水平の張力に
対抗している。上下の2面は面積は広大であ
るが接触は弱く容易にずれて剥がれる。この
性質のために皮膚は擦るとポロポロと垢とな
って角層が脱落するが、逆に魚鱗癬などの角
化異常症では剥離せずに貯留しやすい。
 表面に位置して大気に曝されている、最
表面の角層細胞は、乾燥により収縮する一方
で発汗や入浴時には水を吸って膨潤するなど
体積の変化が著しく、収縮と膨張を繰り返す
うちに辺縁がめくれるようにして脱落する。
 例えば5層からなる角層から細胞が脱落
すると、その脱落部だけは張力を分担する細
胞が4層になる。その分だけ(周囲からの張
力への抵抗力が)弱くなるために、その部分
は周囲の張力に拮抗するまで伸展させられる
ことになり、その部分だけが拡大する。全て
の角化細胞の間はデスモゾームで結びつけら
れているので、周囲に拡大する水平方向のベ
クトルは、下の細胞を引き上げて疎な所を埋
めるベクトルとなる。こうして4層に減少し
ていた部分は5層に復元する。こうして自律
的に立体構築が維持される。
 角層から顆粒層までが規則的な構築であ
るのに、それ以下の細胞には殆ど規則性が認
められないのは角層がほとんど全ての張力を
負担していて、それ以下の細胞には大した力
は働いていないという力学的理由による。
 以上の考察から、表皮は角層だけが規則
的な構築を持っており、それ以下の細胞は角
層細胞の不足を補うべく(一見無秩序のまま
に)準備される。角層の厚さはもちろん、表
皮の厚さと基底層の凸凹構築も全て角層が決
定的に支配していると考えられる。
角層は真皮乳頭層の構築も決定
 表皮の下(内部)にある真皮結合組織は
網状層と乳頭層に分けられる。皮膚

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1.著書:今山修平,上田説子,磯田美登里,本多久夫,種村正美:Chemical peelの作用機序。
松永佳世子,瀧川雅浩,宮地良樹編集,ケミカルピーリングとコラーゲン注入の全て,皮膚科
診療プラクティス,文光堂。pp 6-15,2001
2.著書:今山修平:シワについての基礎知識。松永佳世子,瀧川雅浩,宮地良樹編集,ケミカル
ピーリングとコラーゲン注入の全て,皮膚科診療プラクティス,文光堂。pp 146-158,2001
3.論文:今山修平,上田説子,磯田美登里,本多久夫,種村正美:Chemical peelin?作用機序の理
解とその実際?。日本皮膚科学会誌 110:2001-2,2000
4.論文:Imayama S,Ueda S,Isoda M.Histologic changes in the skin of hairless mice following
peeling with salicylic acid.Arch Dermatol 136: 1390-5,2000
5.論文:Tsukahara K,Takema Y,Moriwaki S,Fujimura T,Imayama S,Imokawa G.Carbon dioxide
laser treatment promotes repair of the three-dimensional network of elastic fibers in rat
skin.Br J Dermatol 144: 452-8,2001
学会発表(論文に1-5までの番号をふりましたので続き番号です)
6.シンポジウム:今山修平:スベスベな肌の理論?皮膚の三次元構築と数理生物学による解析?:太陽
紫外線防御研究委員会:第11回シンポジウム:2001年3月16日:名古屋:国際会議場
7.教育講演:今山修平:皮膚アレルギー疾患の最新の治療:九州アレルギー講習会:第31回2001年2
月17日:福岡:九州大学医学部同窓会館
8.特別講演:今山修平:皮膚の数学的理解?ケミカルピーリングの作用機序?:築後ブロック皮膚科研
究会:2001年2月13日:久留米市:翠香園ホテル
9.一般口演:今山修平、本多久夫、種村正美:肌がスベスベである自律的機序の仮説、それに基づく皮
膚改良理論:平成12年度産学官連携セミナー:2000年12月08日:福岡市:パピヨン24
10.一般口演:増田禎一、今山修平、村上義之、古江増隆:張力条件下におけるヒト線維芽細胞の形態変
化の電顕的観察:日本皮膚科学会福岡地方会:第315回:2000年11月23日:福岡
11.教育講演:今山修平:顔面とくに眼周囲の皮膚について:研究会:2000年11月17日:神戸:MF
リサーチセンター
12.教育講演:今山修平:アトピー性皮膚炎の新しい理解と治療:臨床皮膚科医会:筑豊地区2000年11
月08日:飯塚:のがみプレジデントホテル
13.特別講演:今山修平:皮膚の数学的理解:肌がスベスベの機序とケミカルピーリング:北九州市皮膚
科医会:2000年10月19日:北九州:ホテルニュータガワ
14.教育講演:今山修平:肌がスベスベな訳、老化する訳、若返る手だて:山形皮膚医学研究会2000年
10月13日:山形市:ホテルメトロポリタン山形
15.一般口演:増田禎一、今山修平、村上義之、古江増隆:張力条件下におけるヒト線維芽細胞の形態変
化の電顕的観察:日本臨床電子顕微鏡学会:第32回:2000年9月30日:北九州:北九州国際会議

16.一般口演:古村南夫、増田禎一、今山修平、古江増隆:皮膚のアクチン束の共焦点レーザー顕微鏡観
察:日本電顕皮膚生物学会:第27回:2000年9月23日:福岡:アクロス福岡国際会議場
17.一般口演:上田説子、磯田美登里、今山修平、旭正一:ミニブタを用いたケミカルピールの組織学的
評価:日本皮膚科学会福岡地方会:第314回:2000年9月15日:北九州市(国際会議場)
18.教育講演:今山修平:肌がスベスベなのは何故か?皮膚の数学的理解とケミカルピーリングの作用機
序:長崎臨床皮膚科医会:第45回:2000年8月24日:長崎市:ホテルニュー長崎
19.教育講演:今山修平:表皮角層の構造と老化についての最新知見:ビューティサミット 2000:2000
年8月24日:東京:技術振興協会会館(TEPIA)
20.一般口演:上田説子、磯田美登里、今山修平:高齢女性におけるシワと日光暴露と化粧歴との関連性
とケミカルピール効果の検討:光老化研究会:第1回:2000年7月14日:神戸
21.一般口演:磯田美登里、上田説子、今山修平、塚原和枝、武馬吉則:実験的に作成した光老化皮膚に
対するケミカルピールの組織学的検討:光老化研究会:第1回:2000年7月14日:神戸
22.教育講演:今山修平:皮膚はどうして「シワ」になり「弛む」のか:日本毛髪科学協会:第50回全
国セミナー:2000年6月19日:大分市:第一ホテル大分
23.一般口演:今山修平:皮膚の表面の様子:垢スリからケミカルピーリングまで:日本臨床皮膚科医学
会九州支部総会:第16回:2000年6月11日:福岡市:FFBホール
24.シンポジウム:今山修平、上田説子、磯田美登里、本多久夫、種村正美:Chemical peeling?作用
機序の理解とその実際?:日本皮膚科学会総会:第99回:2000年5月28日:仙台
25.一般口演:上田説子、磯田美登里、今山修平:ケミカルピーリング(グリコール酸とサリチル酸のピ
ール効果についての臨床的比較検討):日本皮膚科学会総会:第99回:2000年5月26日:仙台
26.一般口演:磯田美登里、上田説子、今山修平:サリチル酸溶液によるケミカルピールの組織学的検討
":日本皮膚科学会総会:第99回:2000年5月26日:仙

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

種村 正美

統計数理研究所

本多 久夫

兵庫大学