平成81996)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

8−共研−92

専門分類

7

研究課題名

蛋白質の進化過程におけるアミノ酸置換確率の推定

フリガナ

代表者氏名

ハシモト テツオ

橋本 哲男

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

アミノ酸相互の置換確率(遷移確率)を推定することは、蛋白質の進化過程を確率モデルとして記述し、相同性解析、アライメント、分子系統樹推定などのデータ解析を行う際の基礎となる作業である。本研究では、最新のデータをもとに、現実のアミノ酸置換の過程をより良く表現する置換確率行列を推定することを目的とする。


蛋白質の進化過程におけるアミノ酸置換確率を推定し、相同性探査、分子系統樹の推定などの分子進化学的解析を行う際の確率モデルとして適用することを目標に研究を進めている。本年度も昨年度までに引き続き、置換確率推定に至るための集計を行う準備段階として、各種蛋白質のアミノ酸配列データのアライメントを行った。
対象とした蛋白質は、転写・翻訳に関わる全蛋白種である。これらのうちの一部については、既にアライメントを整備しているものもあったが、1996年8月に古細菌 Methanococcus jannaschiiの全ゲノム塩基配列が報告されたことを契機に、全蛋白種についての再解析を行うこととした。
M. jannaschii の転写・翻訳関連蛋白種それぞれの配列をキーとするfasta 解析(相同性解析)を行い、相同と考えられる配列をコンパイルした。第一段階のアライメントには、Hidden Markov Model による複数配列アライメント法を用い、その結果に基づき、ペアワイズの最尤法アライメントの解析結果等を考慮してマニュアルで修正を加えた。
現在までに、転写関連分子19種、翻訳関連分子114種のアライメントが構築されている。三大生物界に共通に存在するような蛋白種の場合、各生物界内部でのアライメントは容易であったが、全生物界を通してのアライメントは多くの場合困難であり、高度に保存された部分以外はアライメント不可能という例が続出した。一部のアミノアシルtRNA合成酵素を除くほとんど全ての転写・翻訳関連種では、M. jannaschii を含む古細菌の配列は、アライメントパターンからみる限り、真正細菌よりは真核生物のものに近縁であると考えられた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

前年度に引き続き、複製、転写、翻訳、エネルギー代謝、シャペロニン関連の保存的蛋白質、およびミトコンドリア・葉緑体DNAにコードされている蛋白質について、新データの蓄積に伴うアライメントの更新を行う。葉緑体DNAにコードされている蛋白質については、かなりのデータの蓄積があるため、これらについて実際の集計作業を行い置換確率行列を推定する。さらに、推定された行列が既存のものとどの程度異なるかを比較、検討する。とくに、前年度までのデータに基づいて推定したミトコンドリアの置換確率行列との相違を検討する。データの収集、整理、解析を効率良く進めるために、統計数理研究所における共同研究が必要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

足立 淳

オックスフォード大学

岸野 洋久

東京大学

北原 さお美

お茶の水女子大学大学院

長谷川 政美

統計数理研究所