平成202008)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

20−共研−2023

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

3

研究課題名

疾病に対する集団戦略・高リスク戦略の観点からのコミュニティ評価指標の検討

フリガナ

代表者氏名

ナカムラ タカシ

中村 隆

ローマ字

Nakamura, Takashi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

50千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究の目的は、集団戦略および高リスク戦略の観点からコミュニティにおける疾病対策を評価できる指標を提示することである。
平成12年に厚生労働省から提示された「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」では、疾病対策を効果的・効率的に推進するために、地域の実情に根ざした地方計画の立案を義務づけている。しかし、5年後の平成17年に実施された中間評価においては、活用できる指標が未だ乏しいことや計画におけるターゲット集団が不明瞭であることが指摘された。計画立案に際しては、集団戦略(住民全体への対策)と高リスク戦略(個々の疾患に対して高いリスクをもつ集団への対策)の両面から過去の対策を評価する必要があり、これらに対応した指標の開発が求められる。
これまで申請者らは、脳卒中を主眼に置き、国レベル・都道府県レベルの死亡率の動向の変動要因を中村のベイズ型コウホートモデルによる分析にもとづいて検討を行い、加齢のほかに、人々が異なる時代背景を歩むなかで形成された「世代の違い」や、これまでの脳卒中対策を含めた社会環境全体の変化など「時代」の影響のあることを示した。このうち時代効果と世代効果は、それぞれ各都道府県において実施した集団戦略および高リスク戦略の成果を反映するものと考えられた。
そこで平成20年度においては、各都道府県についての時代効果と世代効果を主成分分析することよって、対策の評価指標になり得ると考えられる効果の変動パタンの特徴(主成分)を抽出した。時代効果からは‘住民全体’への対策の「成果の大きさ」指標と「近年の傾向」指標が抽出でき、近年においても住民全体への対策の継続している地域ほど、全期間でみた成果も大きい傾向があった。世代効果からは‘特定世代’への対策の「成果の大きさ」指標と「成果の現れた世代」指標が抽出でき、早い世代から特性の改善がみられた地域ほど、世代全体でみた成果も大きい傾向があった。これらは保健医療対策の歴史・時代背景・社会統計(一般に公開されている情報に限定)と対応していることが確認された。今後はさらに、これら指標でみた地域の特性を具体的に把握し、コミュニティ評価指標としての有用性について検討する予定である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

【脳卒中死亡率の分析について】
平成20年度は、1) の論文発表、および2) の学会発表を行った。
1) Miwa, N., Nakamura, T. and Ohno, Y. (To appear). New indicators for the evaluation of community policies based on period and cohort effects in cerebrovascular disease mortality rates, Japan Hospitals, 28.
2) 三輪のり子・中村隆・大野ゆう子 (2008). 脳血管疾患死亡におけるPeriod効果とCohort効果の対策評価指標としての検討(2), 日本公衆衛生雑誌, 55, 10, 13.
3) Miwa, N., Nakamura, T. and Ohno, Y. (2007). Constructing indicators to evaluate community policies based on period and cohort effects on Cerebrovascular disease mortality rates, The 39th Conference of the Asia-Pacific Academic Consortium for Public Health, Abstract Book, 191-192.
4) 三輪のり子・中村隆・大野ゆう子 (2007). 脳血管疾患死亡におけるPeriod効果とCohort効果の脳卒中対策評価指標としての検討, 日本公衆衛生雑誌,54, 10, 417.
5) 三輪のり子・中村隆・成瀬優知・大江洋介・大野ゆう子 (2006). わが国における20世紀の脳血管疾患死亡率の変動要因と今後の動向, 日本公衆衛生雑誌,53, 7, 493-503.
6) 三輪のり子・中村隆・大野ゆう子 (2006). 都道府県別にみた脳血管疾患死亡率のAge-Period-Cohort効果−6都道府県における試み−, 日本公衆衛生雑誌, 53, 10, 605.
7) 三輪のり子・中村隆・成瀬優知・大江洋介・大野ゆう子 (2006). 脳血管疾患の病型別死亡数の将来推計−ベイズ型ポアソンAge-Period-Cohortモデルに基づく−, 第26回医療情報学連合大会抄録集(CD-R), 158 (P18-1).
8) 三輪のり子・中村隆・成瀬優知・大江洋介・大野ゆう子 (2005). 日本の脳卒中死亡数の2050年までの将来推計, 日本公衆衛生雑誌, 52, 8, 611.
9) 三輪のり子・成瀬優知・中村隆・大江洋介・大野ゆう子 (2004). 脳卒中死亡率のAge-Period-Cohort分析(1報)脳梗塞, 日本公衆衛生雑誌, 51, 10, 509.
10) 成瀬優知・三輪のり子・中村隆・大江洋介・大野ゆう子 (2004). 脳卒中死亡率のAge-Period-Cohort分析(2報)脳出血・クモ膜下出血, 日本公衆衛生雑誌, 51, 10, 509.

【脳卒中罹患率(富山県)の分析について】
1) 三輪のり子・成瀬優知 (2004). 出生コホート分析を用いた脳卒中罹患率の検討−富山県脳卒中情報システムより−, 厚生の指標, 51, 11, 10-16.
2) 三輪のり子・成瀬優知 (2003). 出生コホート法を用いた脳卒中発症率の比較−富山県脳卒中情報システムより−, 日本公衆衛生雑誌, 50, 10, 517.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

開催はありませんでした。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

大野 ゆう子

大阪大学

三輪 のり子

千里金蘭大学