平成302018)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

30−共研−4208

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

9

研究課題名

大学経営における研究戦略を支援する学術リポジトリ書誌情報の活用に関する研究

重点テーマ

IRのための学術文献データ分析と統計的モデル研究の深化

フリガナ

代表者氏名

モリ マサオ

森 雅生

ローマ字

Mori Masao

所属機関

東京工業大学

所属部局

広報・社会連携本部 情報活用IR室

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

1. 背景
学術リポジトリは,大学や研究機関の研究成果を広く公開する為の論文データベースである。多くの研究大学において,研究成果の情報を詳細に記録・保管しているデータベースとして,学術リポジトリは実質的に唯一の仕組みである。近年は,大学経営における資源配分の根拠づけとする為の研究評価への活用の期待や,学際領域や新しい学問領域の開拓に向けたデータ分析としての活用の期待など,その重要性が高まっている。本研究では,学術リポジトリに登録された論文データとWeb of Scienceに採録されている論文情報を組み合わせて,研究大学における大学経営の支援に向けた,学術リポジトリの活用や内包するデータの評価に関する研究を行った。

2. 目的
研究の目的は次の3つである。
A) 学術リポジトリへの登録と論文指標
多くの大学および研究機関において,リポジトリへの論文の登録は,研究者の任意の協力により行われている。登録された論文は無償で閲覧ができることから,その論文に対する研究者からのアクセス頻度は多くなることが見込まれる。ひいては,引用に寄与することが期待されるが,そのことを科学的に調査し,機関全体でリポジトリ登録を推進する意思決定に活用できるかを検討する。
B) オープンアクセスの指標と引用の関係
学術リポジトリにより論文がインターネットを通じて公開されると,どの論文がどれくらい閲覧されているか,また,どんな組織から見られているかといった,ウェブアクセス分析の観点から,リポジトリ論文の社会への波及を観測することができる。このことと論文の引用情報とを組み合わせて,リポジトリ論文の引用への寄与を調査する。
C) 科研費と論文引用
日本において科研費は,大学や研究機関の研究活動を支える資金源である。研究者を軸として,獲得された研究費と,執筆発表された論文の引用状況,および学術リポジトリで公開された論文のアクセス状況を比較し,研究成果の対費用効果の測定や評価を行う。

3. 成果と今後の課題
本研究は、東京工業大学のリポジトリ(T2R2)のアクセスデータを用いて行なった。
観点A)について、リポジトリに登録された論文で、アクセス数と被引用数には有意な相関は見られなかった。
観点B)について、オープンアクセスとしているリポジトリ論文は少ない(著作権処理手続きなど煩雑)ため、有効なデータが得られなかった。しかし、博士論文は公開が義務付けられているので、これを対象にして引用数ではなく、どのような読者がリポジトリ上の博士論文を閲覧しているかを調査した。すると、2018年1月から6月までの間に博士論文コンテンツにはアクセス元が判明できる約3000件のページビューが得られており、最も多いのは大学からのもので70%であったが、次点で企業から20%ほど得られていた。一般に、博士論文は研究対象としている分野の最新の動向をレビューすることが多いので、先進的な研究成果の知識を得るには格好の情報源となっており、一般の企業からの閲覧が得られていると考えられる。そうした側面がアクセス分析に現れていると思われる。
観点C)については、データを突合する技術的な困難が明確になった。リポジトリに登録された論文情報と、学術データベース(例:Web of Science)に登録された論文情報、および科研費情報を紐づける仕組みとして、前者は例えばORCID、後者は科研費研究者番号が考えられるが、有効な分析をおこなえるデータが得られるほど、ORCIDが普及していなかった。分野限定のPIDで十分に普及しているものはあるが、学術研究を包括しているPIDは今の所ORCIDのみである。現在、日本では10万人ほどのORCID取得者がおり、増加傾向にあることが報告されているので、ある程度普及すれば、この観点での有意な分析も行えるであろう。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

(本研究の成果は学内のIR業務で報告されているため、公開情報としては限られております。)

田中,小野寺,加藤,大石,森(東京工業大学),「オープンアクセス化された学位論文の業種別アクセス分析」第25回大学教育研究フォーラム・ポスター発表,京都大学,2019.03.





研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究会は開催しておりません。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関