平成282016)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

28−共研−9

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

7

研究課題名

実現確率的ボラティリティ変動モデルによる株価ボラティリティ推定

フリガナ

代表者氏名

タカイシ テツヤ

高石 哲弥

ローマ字

Takaishi Tetsuya

所属機関

広島経済大学

所属部局

経済学部教養教育

職  名

教授

 

 

研究目的と成果の概要

 実現確率的ボラティリティ変動モデルは、従来の確率的ボラティリティ変動モデルに実現ボラティリティのダイナミクスモデルが追加されている。このモデルでは、実現ボラティリティのバイアスを修正するパラメータが導入されており、バイアスパラメータの値も他のモデルパラメータと一緒に推定によって決定される。従って、予め実現ボラティリティのバイアスを修正しておく必要がない。また、実現確率的ボラティリティ変動モデルは、日次収益率データと実現ボラティリティデータの両方の情報を利用して推定を行うため、より精度良いボラティリティ推定ができることが期待される。
 本研究では、東京証券取引所で取引される4つの株価(アステラス製薬、キャノン、パナソニック、野村ホールディングス)の高頻度データを利用した。高頻度データから様々なサンプリング周波数で計算した実現ボラティリティと日次収益率をインプットとして、実現確率的ボラティリティ変動モデルから日次ボラティリティを推定した。得られたモデルのバイアスパラメータのサンプリング周波数依存性は、Hansen-Lundeのバイアス修正パラメータと傾向が似ていることが分かった。更に、推定した日次ボラティリティによって日次収益率を標準化し、それらの分散と尖度を求めた。日次ボラティリティが精度良く求められていれば、分散と尖度は標準正規分布の値になると期待される。分析の結果、分散は1に近い値になったが、尖度は3に近くになるものの、サンプリング周波数が高くなると3からズレて増加することが分かった。このことは、サンプリング周波数が高い領域ではマイクロストラクチャーノイズの影響が大きく、実現確率的ボラティリティ変動モデルの持つバイアス修正パラメータでもこの影響を十分に取り除けていない可能性があることを示していると考えられる。