平成31991)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

3−共研−22

専門分類

3

研究課題名

体温リズム曲線の推定法に関する研究

フリガナ

代表者氏名

コバヤシ トシタカ

小林 敏孝

ローマ字

所属機関

足利工業大学

所属部局

工学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

精神疾患の中には生体リズムの乱れが原因で起こるものがある。生体リズムの特徴を定量的に記述し,リズムの乱れを評価する方法が確立されていないため研究の遂行に大きな障害となっている。かかる理由から,生体リズム特にヒトの体温リズムの推定法とリズムの乱れを評価する統計学的手法の開発を行う。


人間の精神機能は生物学的な背景に大きく依存している。特に近年、体温リズムに代表される人間の概日リズム(サーカディアンリズム)機構の変調が欝傾向を更新させるという報告がさなれ、生物リズムの精神身体機能への影響を組織的に研究しようということになった。我々は臨床時間生物学研究会なるものを平成元年に発足させた。ここで、体温リズムの変調を定量的に評価する方法が生物リズム研究には欠く事のできない問題であることを認識し、ここに統計数理研究所との共同研究によりこの問題を解決する事になった。
幸いにも、赤池、石黒ら(1、2)によって体温リズムを統計的に評価する方法論が開発されていたので、この方法を実際の臨床に適応できるように改良する事を当面の目的とした。主な改良点は次にようなものである。
1)体温概日リズムのリズム性を評価できるようにする;体温リズムは小児で最も強く、加齢によって弱くなると臨床医の間ではよく言われるが、この概念を数量化する。
2)体温リズムの振幅と位相の変化に関する評価法を開発する;徹夜や海外旅行のように睡眠覚醒リズムを変調させる体温リズムの振幅や位相に変化が生じる。この変化を定量的に評価する。臨床的には、欝状態時の体温リズムの振幅と頂点位相が回復期にどのように変化するかを定量的に評価したい。
3)データサンプル数の最小化と測定間隔のランダム化を可能にする;測定が長時間に及ぶのでデータサンプリングの回数は患者に大きな精神身体的な負担を掛けるので、測定回数を最小にすることが望ましい。またサンプリング間隔は生活内のイベント(起床、就床、食事等)の時間を考慮して不規則サンプリングが望ましい。
4)実際の計算機プログラムは最も普及しているパソコンレベルで可動する規模とする。
以上のような改良を平成5年度中に行う。現在、プログラム改良に必要な長時間体温データを記録制作中である。
(1)Akaike,H.(1980) Likelihood and the Bayes procedure, Bayesian Statistics,(Bernardo,J,M.,De Groot,M.H.,Lindley,D.U. and Smith,A.F.M. eds), University Press, Valencia,pp143-166.
(2)Ishiguro,M.and Akaike,H.(1985) BAYSER, a BAYsian SEasonal Adjustiment Procedure, in TIMSAC- 84, Computer Science Monographs, No.22, The Institute of Statistical Mathematics,Tokyo,pp1-55.


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

季節性うつ病に観られるように精神疾患の中には生体リズムの乱れが原因で起こるものがある。現在,複雑多岐にわたる精神疾患の理解と治療法の開発にとって体温リズムの定量的評価の開発が急務とされている。かかる背景から,この共同研究は精神医学総合研究所にとって新しい精神医学の研究方法論の開発に,統計数理研究所にとって統計学の新しい解析法の開発のために必要である。
実際の研究内容は,健康成人の1週間におよび体温記録から体温の概日リズムを統計学的手法で推定し,睡眠覚醒リズムを変化させたときに観られる概日リズムの変化(乱れ)を定量的に評価する方法を開発する。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

荒畑 恵美子

統計数理研究所

石黒 真木夫

統計数理研究所