統計数理研究所におけるデータ解析,モデル開発,データ通信の中心となっているのは統計科学計算機システムである。このシステムはベクトル計算機HITAC S-3600/120と大型汎用計算機HITAC M-880/180の2台を中心として構成されている。ベクトル計算機S-3600/120を用いて,多種多様な統計解析および統計的シミュレーションが実行されている。スカラー計算が中心となる統計解析,システム管理,ネット網との接続のために,M-880/180が用いられている。これらの計算機は平成6年1月4日から稼働している。同時に,専用端末を同軸ケーブルを通した直結型からイーサネット接続のものへと変更し,より効率的利用を可能にした。これらの専用端末のみならずイーサネットに接続されたワークステーション,パーソナルコンピュータを端末として用い,効率的にプログラムの作成,編集,デバッグ及び計算の実行等が行われている。大規模な計算はバッチ処理として行われることが多い。
プログラム言語としては,FORTRANが最も多く使用されている。S-3600/120ではベクトル化されたプログラムの実行が可能になっている。APL,PL/1の使用頻度も高い。その他,REDUCE,LISP,PASCAL等も使われている。
SAS,SPSS-X,BMDP,GENSTAT,IMSL等の市販プログラムも利用することができる。また,所員によって開発されたデータ解析プログラムを統合化し,ユーザインターフェースを改善するために,統計解析ソフトウェア運用システム(略称:σ2/μ-ism)を開発し,運用している。
プログラム開発及び比較的規模の小さいデータ解析のためにワークステーション,パーソナルコンピュータが使われている。プログラム言語としては,S,C,FORTRANが良く使われている。データの可視化のためにAVSや数式処理のためにMathematicaも良く使われている。ワークステーション,パーソナルコンピュータ,統計科学計算機システムはイーサネットに接続されており,計算資源の有効利用及び負荷の分散を図っている。イーサネットに接続されている計算機間では,ftpによるファイル転送が可能である。この機能により,プログラム資源,データ資源を有効に共有することができる。また,イーサネットに接続されているパーソナルコンピュータ,ワークステーションからは,ワークステーション,統計科学計算機システムを自由に利用することができ,研究・開発を能率的に行える。現在のネット網は図1に示す通りである。N1を通して国内の計算機と,TISNを通して国内外のインターネットと接続されている。公衆回線,DDX網からはターミナルサーバを通して利用することができる。
コンピュータを利用できるのは,所員(客員を含む),共同研究員,外来研究員,総合研究大学院大学の大学院生,名誉教授等,統計数理研究所統計科学計算システム利用規定に定められた資格を有するものに限られる。コンピュータに関する管理運営は,「計算機委員会」の協議に基づいて,統計データ解析センター及び技術課第一係,第二係が行っている。
統計数理研究所で開発されたソフトウェアの配布も行っている。表1に主なプログラムを示す。統計ソフトウェアの開発,整備,配布は統計データ解析センター及び技術課第一係,第二係が行っている。
【統計数理研究所が開発した主なプログラム】
プログラム名 利用分野〈事例〉 提 供 先 機 関 名 TIMSAC〈ティムサック〉 ●脳波分析 京都大学 高エネルギー物理学研究所 ●経済変動の分析 東京大学 社団法人漁業情報サービスセンター 時系列データの解析,予 ●工業プロセスの最適制御 大分医科大学 東京電力福島原子力発電所 測,制御のための総合的 ●船舶のオートパイロット 九州大学 サッポロビール株式会社 プログラムパッケージ への適用 米国商務省 東京都老人医療センター 等 ●地震データの解析 BAYSEA〈ベイシー〉 ●経済時系列データの季節 東京大学 通商産業省 季節変動・週変動・日変 調整 筑波大学 社団法人中央調査社 動等の周期的変動を含む 横浜市立大学 経済企画庁 データを解析するための 日本銀行 米国センサス局 等 プログラム CATDAP〈キャットダッ ●多次元クロス表の分析 京都大学 農林水産省 プ〉 日本女子大学 国立療養所南福岡病院 カテゴリカルな目的変数 名古屋大学 花王株式会社東京研究所 に対する最適な説明変数 東京女子大学 読売新聞社 等 を自動的に選択するため のプログラム NOLLS1〈ノルス1〉 ●原子炉材料解析 千葉大学 日本IBM株式会社 非線形最小二乗法のプロ ●プラント機器設計 京都大学 東京大学海洋研究所 グラム(関数群の二乗和 ●新薬の薬動力学解析 名古屋大学 東京都環境科学研究所 を最小にするパラメータ ●呼吸器系の音波による内 電力中央研究所 東北大学電気通信研究所 の値を数値的に求める) 部解析 独協医科大学 UCLA 等 ●X線分光学におけるスペ クトル解析 QUANT〈クオント〉 ●青少年の行動調査分析 東京大学 社団法人新情報センター 数量化理論のプログラム ●臨床医学データの分析 東京工業大学 環境数理研究所 質的データの多変量解析 ●選挙予測 筑波大学 電通 予測・判別・分類・要因 ●広告効果分析 兵庫教育大学 朝日新聞社 分析 ●教育心理等のデータ解析 建設省 読売新聞社 等 MINTS〈ミンツ〉 ●育種データの分析 近畿大学 工業技術院電総研 クラスター分析の諸手法 ●パターン認識への利用 岡山大学 農業環境技術研究所 (プログラム)を統合化 ●マーケティングセグメン 日本経済新聞社 聖マリアンナ医科大学 したパッケージ テーションへの利用 朝日新聞社 社会調査研究所 等 DALL〈ドール〉 ●医学データ解析 国立天文台 最尤法によるモデルあて ●非定常多次元時系列デー 大分医科大学 はめのためのDavidon法 タ解析 米国国立電波天文台 等 による対数尤度最大化の ●最尤法が必要な全分野 プログラム ARdock〈エイアールドッ ●プラント解析 大分医科大学 ク〉 ●システム解析 明治大学 等 TIMSACによるシステム解 ●生体情報解析 析を対話的に行えるよう にしたプログラム(S言 語が必要) LSAR〈エルエスエーアー ●地震波の到着時刻の推定 北海道大学理学部地震予知センター ル〉 ハワイ大学 局所定常ARモデルに基づ 株式会社CRC総合研究所 等 いて時系列モデルの変化 時点を精密に推定するた めのプログラム 一変量,多変量版がある MOLPHY〈モルファィ〉 ●系統樹の推定 京都大学 ワシントン大学 アミノ酸配列・DNA配列 国立遺伝学研究所 カリフォルニア大学バークレー校 データから最尤法により ウォータール大学 ロンドン自然史博物館 分子系統樹を推定するた テキサス大学 東京大学海洋研究所 等 めのプログラム。 PROTMLの機能を含んでい る S-timsac〈エスティムサ ●経済変動の分析 ック〉 ●工業プロセスの最適制御 TIMSACによるシステム解 ●船舶のオートパイロット 析をワークステーション への適用 上で対話的,グラフィカ ルに行えるようにしたプ ログラム RCON〈アールコン〉 ●共同研究の実施 国立天文台 遠隔地にいる研究者との 共同研究を支援するため のプログラム STATS〈スタッツ〉 ●経済データの季節調整 東京工業大学 米国センサス局 非定常性,非ガウス性, ●欠測値の補間 東京商船大学 東京大学経済学部 非線形性,欠測値,はず ●時変スペクトルの推定 経済企画庁 地質調査所 れ値などの様々な特性を ●非ガウス型平滑化 ハワイ大学 北海道大学理学部 等 持つ時系列を状態空間モ デルを用いて解析するた めのプログラム集 (15本のプログラムから なる) MISISM〈ミシズム〉 ●教育統計 東京工業大学 統計数理研究所地図情報 ●疫学 筑波大学 システム。統計情報を地 ●エリアマーケッティング 電気通信大学 図上で描くこと,地図コ 慶應義塾大学 ードを媒介にして各種統 国立がんセンター 計情報を結合利用するこ 文部省 等 とを目的としたシステ ム。地図データ(市区町 村境界データ)はSAS/ GRAPHあるいはS言語で 利用可能な形で配布可能 SAPPS〈サップス〉 ●地震活動 京都大学 東京工業大学 地震活動の解析のための 九州大学 東京大学地震研究所 点過程モデル族 北海道大学 名古屋大学 等 AFT〈エイエフティ〉 ●余震解析 京都大学 東北大学 余震を解析するためのパ 東京大学 北海道大学 ソコン用プログラム 気象庁 立命館大学 等 OMORI〈オオモリ〉 ●余震解析 北海道大学 気象庁 等 余震を解析するためのメ インフレーム用プログラ ム TIMSAC for Windows ●脳波分析 富士総合研究所 安田信託銀行 〈ティムサック フォ ●生体活動の分析 三菱総合研究所 日本開発銀行 ウィンドウ〉 ●商品売上予測 明治生命 日経データ TIMSAC72の一変量ARモデ ●株価予測 住宅金融公庫 和光経済研究所 ル,多変量ARモデルを ●地震データの解析 住友生命 一橋大学 MS-WINDOWS上で動作する 東京学芸大学 等 ようにしたプログラム
1.統計科学計算機システム関係
●ベクトル計算機S-3600/120(250MFLOPS,主記憶256MB,拡張記憶2GB) ●大型汎用計算機M-880/180(72MIPS,主記憶512MB,内蔵データベース機構) ●磁気ディスク装置(60GB) ●半導体記憶装置(1GB) ●磁気テープ装置(2台) ●カートリッジ磁気テープ装置(4ドライブ) ●カセットテープライブラリ(791GB) ●コンソール装置(オペレータ用2台,ユーザ用2台) ●レーザプリンタ(連続紙2台,カット紙3台) ●物理乱数発生機(1.5MB/S 1台) ●CCP回線(全二重25回線,DDX-P 1回線) ●パソコン端末(イーサネット接続端末 3020H 45台,図書端末 2050/32E 1台) ●サーバー用ワークステーション(3050RX/320 4台,3050RX/320G 1台) ●X端末(HT-3411-11 22台,HT-3451-G11 2台)2.ワークステーション関係(互換機を含む)
●SUN3/260 1台 ●SUN3/60 3台 ●SUN3/50 6台 ●SUN3/80 3台 ●SUN4/370 2台 ●SUN4/60 1台 ●SUN4/40 2台 ●SUN4/75 4台 ●S4/2 10台 ●S4/IX 5台 ●SparcLT 1台 ●S4/10 4台 ●UX3000 (SS1000互換) 1台 ●NEXT 6台 ●EXPLORER 1台 ●RS-6000/520 1台 ●RS-6000/3BT 1台 ●RS-6000/250 1台 ●HP9000/750 2台 ●3050RX 3台 ●TITAN3000V 1台 ●TITAN VISTRA 1台 ●MIPS RC6280 1台 ●MIPS RS6280 1台 ●NEWS3260 1台 ●NEWS1750 1台4.その他
●16ビットパソコン 50台 ●32ビットパソコン 200台 ●特殊用途ミニコンピュータシステム 2台 ●アナログ計算機(EAI1000) 2台 ●光磁気ディスクシステム FIREX9000 1台