5. 1988年アメリカ調査の標本抽出計画

5. 1988年アメリカ調査の標本抽出計画 

 アメリカにおける標本調査の標本抽出計画のうち、日本との相違点は、アメリカでは、調査対象者全体を網羅して記載してある、標本抽出台帳(リスト)として利用できるような名簿がないことである。したがって、調査地点として抽出された地域から、調査対象者個人を抽出するに当たり、調査対象に該当する者全部のリスティングをしなければならない。

このようにして作成されたリストを利用して調査対象者の抽出をおこなうことになる。このため、標本抽出の過程が、日本の場合とくらべ、大変手間のかかる作業となる。このため、日本とは異なった標本計画が利用されることが多い。今回の1988年アメリカ調査で利用した標本抽出計画の大要を以下にのべる。


母集団アメリカ合衆国在住の18歳以上の成人一般市民(病院や刑務所など施設にいる人を除く)
地域の層別次のように人口規模×地方による。
1)(都市人口規模)アメリカ全体を、1980年国勢調査資料に基づく都市人口規模別に次の7つの層に分ける
a)大都市圏の人口100万以上の市(または複合した市)域
b)大都市圏の人口25万から99万9999までの市(同上)域
c)大都市圏の人口5万から24万9999までの市(同上)域
d)都市圏でそれ以外の市街地域
e)都市圏以外の人口2500人以上の市域
f)2500以下の町村
g)町に含まれない農村部
2)(地方)つぎにこれらの層を東部、中西部、南部、西部の4地方にわける。各地方の区分は、国勢調査資料の区分である。

 このようにしてアメリカ全体は人口規模×地方の層に層別され、各層内を地理的順序に配列する

 調査地域の抽出
このように並べられた市郡人口を180の等しい人口の層(Zone)に分割し、各層から2調査地域を抽出する。各地域の抽出は、その地域の1980年国勢調査資料の人口規模に比例した確率比例抽出法による。

 調査地点の抽出
ブロック統計が利用できるところでは、調査地域から調査地点として、ブロックあるいはブロックの組を確率比例抽出する。それ以外のところでは、ブロックあるいは地域セグメントのランダム・サンプルをとる。  各調査地点では、調査地点を含む地域の地図上に、抽出されたブロックを取り囲む道路をワク取りし、その道路上にランダムに調査出発点を選定し、それ以降の調査経路、および方向を図示する。(道順の矢印はあらかじめランダムにきめる。)

 調査の実施
調査は出発点における住宅の居住者の調査から始め、指示された道順に従ってそれ以降の調査を進め、初めに割当てられた数の調査が終了するまで調査を続ける。すなわち、調査は出発点の住宅から始め、在宅者のうち調査対象資格者18歳以上)を、世帯について1人だけ次つぎ調査していく方式をとる。

 調査は、各人の在宅率を考え、在宅する可能性の高い週末・休日、それに平日の場合は女性に対しては午後4時以降、男性に対しては午後6時以降に訪問するよう調査員に指示してある。また不在者に対する再訪問をするよりも、在宅率で加重する方式をとった。すなわち、在宅で調査できた対象者には調査前3日間の該当時刻(調査実施可能な時間帯)における在宅の有無を質問し、属性、地域による在宅率を推定し、不在による偏りを減少せさる方式を用いた。
(cf. Politz, A. and Simmons, W., "An Attempt to Get the "Not at Homes" into the Sample without Callbacks",JOURNAL OF THE AMERICAN STATISCAL ASSOCIATION, Volume 44,[March, 1949],pp.9-31.)

調査の概要
このようにして抽出された調査地点 360地点のうち、計画標本数1500に対応する322地点について、各調査地点当り平均5人ずつ面接調査した。
調査不備および調査実施後のチェックにより判明した不完全回答標本を除き、集計に利用したものは1563である。