はじめに
このレポートは統計数理研究所共同研究「無限分解可能過程に関連する諸問題」(17一共研一4001)の成果報告書であり,2005年10月27日〜10月29日に統計数理研究所で開催された共同研究集会において発表された講演内容を,及び,その後の共同研究者間の討論等を通じて得られた成果をまとめたものである。この研究目での共同研究は本年度で10年目となるが,その内容は精密化と多様化により,さらに充実したものとなっている.
無限分解可能過程は,有限次元分布が無限分解可能な確率過程として特徴付けられるが,最も典型的なLevy過程を中心として,関連する様々なキーワードのもと,各々の共同研究者の問題意識により,興味ある問題が提起されている.分布そのものについての研究では,Levy過程による確率積分で表現される無限分解可能分布のについての研究では,Levy過程による確率積分で表現される無限分解可能分布のいくつかのクラスについての特徴付けや,クラス自体の包含関係などについて調べられている.またコンボリューションルートについての研究や擬左連続な局所マルチンゲールに関する据の分布の極限定理などがある.ランダムな環境における話題としては,その中のランダムな運動の極限を考えるために導入された,確率測度に値をとる確率変数の無限分解可能分布についての研究や,ランダムウオークの極限として現れる作用素半自己相似過程の研究などがある.数理ファイナンスにおいては,幾何レヴィ過程のマルチンゲール測度についての研究やジャンプ型マルコフ過程によるファイナスモデルのマリアバン・カリキュラスによる解析.1次元拡散過程に関連するものとしては,完全単調なLevy測度を持つ加法過程に関する研究や流出境界におけるexcursion測度の存在とそれによる加法過程についての研究.また,遺伝子モデルについての大偏差原理や,ガンマ過程や安定従属過程に有効なある反転公式の結果,さらに安定分布を用いた乱数の発生についての研究などもある.
これらの中には昨年度から継続したテーマもあるが,新たな方面への取り組みも多く含まれている.来年度もこれらの共同研究を継続する予定である.最後に,本共同研究参加者,および,お世話になった統計数理研究所の方々に,この場を借りてお礼を申し上げます.
2006年2月
研究代表者 平場 誠示
( 共同研究リポート184 無限分解可能過程に関連する諸問題(10) より引用 )