b値とETASモデルにもとづく日本列島の標準的地震発生予測
Earthquake forecast in Japanese Islands based on location-dependent b-values and space-time ETAS model

統計数理研究所

Institute of Statistical Mathematics

 

 

日本の地震活動を予測する標準モデルを目指し,以下の統計モデルをもって,国際共同プロジェクトCSEPCollaboratory for the Study of Earthquake Predictability)の予測性能比較実験に参画する.

マグニチュードMc以上の各地の地震発生率 l (t,x,y) を予測するために,地域性を考慮した階層的時空間ETASモデル(以下の別項および第1図および第2図参照)を使用する.その上で地震の大きさの発生予測にはG-R分布に従い,b値は地域性をもつとする(第3図参照).時空間マグニチュードの微小領域での求める発生確率は

   (1)

となり,これをもって200910月(暫定)から予測する予定である.予測モデルの作成に使用したデータは気象庁カタログ一元化後(199710月−200812月)のM4.0以上のデータであるが,先行する履歴情報として宇津カタログを含む1885年から一元化前(19979月)までのM6.0以上の地震データも使用した.同様に1926年−2008年のM5.0以上のデータについても推定してみた(第2図参照).b(x,y) モデルについては第3図参照.

 

階層的時空間ETASモデルおよびb値の地域性の推定

時空間ETASモデルは大森・宇津公式と余震域のマグニチュードに関する宇津・関のスケーリング則に依拠して作成されたものである.時刻に於いて或る場所での地震発生率が

       (2)

で表現されるものである.ここで, K, α, p, qは常時地震活動度, ,は下限マグニチュードとj番目の地震のマグニチュードであり, は余震分布の等高線を楕円で近似するような行列, 座標は必ずしも震央でなく余震分布の重心である.これらは多くの場合, それぞれ単位行列と震央であるが, たとえば1時間以内の余震分布から前処理によって平均や共分散を推定してカタログを作成する1).階層的時空間ETASモデルは, 時空間ETASモデルを一般化して, 常時地震活動度が位置,パラメタK, α, p, qが位置  に依存すると考え, 各地で異なる地震活動様式を定量化する.推定はパラメタ変化の滑らかさを制約条件として入れてベイズ法で最適な解として得られる2).パラメタμ, K,α, p, qの推定図については第1図参照.同様にb値についてもベイズ法で推定される(第2図参照).

(尾形良彦)

 

 

文献

1) Ogata, Y.: Ann. Inst. Statist. Math., 50, 379-402 (1998).

2) Ogata, Y.: J. Geophys. Res. 109, B3, B03308, doi:10.1029/2003JB002621 (2004).