Updated on 17 June 2010

平成22521

 

187回地震予知連絡会 重点検討課題「地震活動について」趣旨説明

 

趣旨説明者 統計数理研究所 尾形良彦

 

1.目的

地震活動の標準的予測モデルの提案を促し、それらの性能を検証するCSEP研究プロジェクトの日本に於ける取組みについて紹介し議論する。さらに、地震活動や余震活動における種々の異常現象の検出法、その有意性や大地震や大余震の予測の確率利得を向上させる方策について議論をする。

 

2.背景と意義

地震の震源やマグニチュードなどを記載した震源カタログは地球物理データの中でも収録が最も長い期間にわたり、不均質性はあるが検知能力の及ぶ限り地域を選ばず記録されている点で貴重である。特に一元化後の震源カタログは検知力および精度が格段に上がり、収録地震数も飛躍的に増えている。Hi-netによって全国の発生地震をほぼリアルタイムで把握でき、F-netなどの発震機構を含むデータは地殻のストレス変化の議論に重要な役割を占めてきている。これらのデータソースから地震活動の詳細な研究が進むことが期待されている。しかし、震源要素をプロットしたり地震を数えたりするだけで地震活動を議論するのでは、シミュレーションによる通常の地震活動の再現性が儘ならず、多くの微妙な異常現象について議論が難しく、主観性が大きく関与し、限られた典型的な異常しか認知できなかった。

最近、大量のデータを前にして、標準的な地震活動を捉えるモデルの開発を促し、それらの性能を予測の観点から比較検証する国際的なプロジェクトCollaboratory for the Study of Earthquake PredictabilityCSEP)が主要地震国で連携して進められている。同時にこれは、これまで提案されてきている、地震活動の様々な異常性による各種の地震予測法の有意性と確率利得を評価できる基盤を整備することにもなっている。科学技術・学術審議会測地学分科会の建議や地震・火山噴火予知研究協議会の中でもこの課題を取り組むことが定められ、具体的にCSEPの日本版実験への参入が広く呼びかけられ実施されている。この取り組みについて、我が国の実情と特徴を中心に紹介し、議論を深めたい。

さらにもう一つの柱として、従来から報告されている地震(余震)活動の異常の研究について、標準的な地震活動と対比することなどから定量的な議論を試みる。そこで、異常性の物理的な考察やモデリング、それらの異常性を手掛かりとした大地震(大余震)の予測に対する可能性と有意性の検証、それらの予測が確率利得の向上につながるかの検討、これらもCSEP日本のプロジェクトの課題であると考える。

今迄や今後に予定されている予知連重点課題となるべく重複しないように地震活動の定量的な議論に重点を置いて計画した。他方GPSやひずみ計傾斜計や地震メカニズムなどを使った応力場の変化と地震活動予測との関係は極めて重要であるが、今回この場でまとまった議論する報告を十分組織できなかった。しかし、とくにそういった報告の提案があれば下記「Nその他の機関および議論」に含めたい。

 

3.具体的議事内容

1)進行の考え方

・2部構成とする。

第1部ではわが国のCSEPプロジェクト関連の取り組みに基づき議論を行なう。

第2部では、地震(余震)活動の異常の定量化や地震活動の予測的研究について報告していただき議論する。

2)プログラム案14:5016:40 110分)(以下,題目はいずれも仮)

@冒頭説明(3分) 課題検討の目的/意義/観点

1わが国のCSEPプロジェクト(46分)

A 東地震研 (20分)・CSEP日本の取り組みについて

B 気象研 (5分)・地震発生予測MRIモデル

C 統研 (0分)位置に依存するb値と時空間ETASモデル (資料配布のみ。20098月予知連会報)

D 名古屋大(5分)Operational forecastingの勧告について

E 京大防災研防災科研 (8分) CSEP日本版クーロンモデル

F その他の機関および意見交換 (8分)

2部 地震活動異常の定量化と予測に向けて(59分)

G 統研 (12分) 地震活動の短期予測と地震予測の性能評価について(概要)

H 北大 (5分) Zmapの地震活動静穏化活発化の有意性の評価について

I 防災科研 6分) 地震活動の空間パタンの類似性

J 気象研 6分) 前震の確率予測

K 気象庁(7分)地震活動異常を定量的に評価・診断するシステムの構築

L 東大理 (7分) ゆっくりすべりと群発地震

M 産総研 7分) 水と地震活動予測

N その他の機関および意見交換 (9分)

 

4.資料作成要領

1)資料は、プログラム案に示された機関、及び提出を希望するその他の機関が作成する。

2)資料は、議論の目標点、及び議論すべき項目に示された内容に沿って、それぞれの機関が作成する。

3)プログラム案に例示された内容は、議論を行なうにあたって必要と思われる内容のうち、それぞれの機関で既に予知連・論文等で発表済みのものであるが、実際に作成する資料は、必ずしも、この例示のとおりである必要は無く、説明しやすいように、適宜、取捨選択して構わない。

4)資料作成にあたって

・現象の全体像を俯瞰する場合、全体的な特徴を把握しやすい資料とする

・個別地域の活動に着目する場合、その詳細を把握できる資料とする。

・研究における仮定とその妥当性をコンパクトに説明した資料も加える。

5)資料の範囲

・既に予知連等に提出されている資料または多少のレイアウト変更で済むもの

・新たに作成する場合は、公開可能なもの。

・レクチャー以外の資料についても、過度に専門的にならないように。

・時間の制約のため、報告では省略するが、記者レクなど一般向けの分かりやすい入門図などを数点追加していただけるとありがたい。

 

 

 


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