平成10年度 総合研究大学院大学 国際シンポジウム

複雑系への戦略 - 構成と記述 -

葉山セッション (3月 10 - 12日、総合研究大学院大学 本部、葉山)
一般講演会(3月13日、銀座ヤマハホール, 東京)

趣旨

過去10年ほどの間に、「複雑系」の名のもとに、複雑なシステムへの理論的なアプローチへの期待が高まってきた。いわゆる「複雑系」は、簡単なシステムを構成して、シミュレーション等を通じて解析することで、複雑なシステムを理解するための概念を獲得することを目指すものである。

しかし、複雑なシステムへのアプローチはこれに限るものではない。たとえば、統計科学では、複雑なシステムにおける情報の流れを、統計モデルという道具を用いてデータから抽出することで実世界の複雑さを理解しようとする。これは演繹的に仮想世界を構築する「複雑系」に対して、帰納的に実世界の複雑さを分析するという相補的な観点を提供していると考えられる。

また、「複雑系」に近いが、より伝統的なシミュレーション科学の方法論としては、現実のシステムにできるだけ近いシステムをシミュレートし、実世界の実験では不可能な制御や測定を行うことによって、複雑なシステムの定性的・定量的な理解をめざすというアプローチがある。

これらの方法論の間の相互補完的な関係は、還元主義・反還元主義といった分類で理解できるほど単純なものではない。複雑さに対するより良い理解を得るためには、これらのアプローチについて実際の例に即した比較検討を行う機会が必要と考えられる。

このような認識に基づき、本シンポジウムは、複雑なシステムを理解するための方法論としての「複雑系」的なアプローチと統計科学的手法をはじめとするそれ以外の手法を対比させ、総合的な比較検討を行うことを主な目的としたい。

プログラム(案)
葉山セッション (3月 10 - 12日)

同時通訳あり


3月10日(水)

11:00-14:00 受付 総合研究大学院大学 本部、葉山
12:30-13:30 昼食
11:00-14:00 ポスター発表者によるポスターの設置


14:00-14:10 挨拶 (総研大学長 廣田栄治)
14:10-14:20 問題提起 (国際シンポジウム実施委員会委員長 尾形良彦)


1. シミュレーション:抽象と具象

14:20-14:50 平田光司 (総研大・高エネ研); イントロダクション


14:50-15:40 佐藤哲也(総研大・核融合研);磁気ダイナモシミュレーションの具象と抽象
15:40-16:30 柳田達雄 (北大); 雲の形態シミュレーションから得られた雲ダイアグラム


16:30-16:50 コーヒーブレーク


16:50-17:40 郷 信広 (京大); 蛋白質天然状態の複雑なエネルギー地形
17:40-18:30 Eugene Shakhnovich (Harvard U); Protein folding: From Lattice Models to Real Proteins

19:00-21:00 歓迎パーティ


21:00-22:00 ポスター発表者によるポスターの設置


3月11日(木)
1. シミュレーション:抽象と具象(続き)

08:30-09:20 山本 匡(民族博物館);社会的複雑性と情報の社会政治学
09:20-10:10 安富 歩(名大); 貨幣の自成と自壊



2.ポスターセッション

10:10-12:40 ポスターセッション (コーヒー付き)

   発表者・タイトル

12:40-13:40 昼食


3. ダイナミクス:非線形現象と時系列解析

13:40-14:00 尾崎統 (総研大・統数研); イントロダクション
14:00-14:50 Pedro Valdes-Sosa (キューバ神経科学センタ); The Statistical Analysis of Nonlinear Brain Dynamics
14:50-15:40 林 初男 (九工大); 脳のリズム活動のカオス的性質


15:40-16:00 コーヒーブレーク


16:00-16:50 Milan Palus (Inst. Computer Science SA, Czech): Detecting a Driven Nonlinear Oscillator Underlying Experimental Time Series: The Sunspot Cycle
16:50-17:40 松本 隆 (早稲田大); 非線形ダイナミカルシステムの再構成と予測
17:40-18:30 Peter Brockwell (Colorado State U); Modelling Finanfial Time Series With Continuous-Time Non-Linear Autoregressions


19:00-20:30 夕食



3月12日(金)
4.認知とシンボル: 「ことば」の創発と解読

09:00-09:20 伊庭幸人 (総研大・統数研); イントロダクション
09:20-10:10 谷 淳 (ソニーCSL); ロボットにおける認知と自律性の構造:力学系の見地から
10:10-11:00 橋本 敬 (理研); 仮想世界におけるコミュニケーションと言語の創発


11:00-11:20 コーヒーブレーク


11:20-12:10 井上京子 (慶應大); 言語が示す空間認知の環境適応型と自己中心型


12:10-13:30 昼食


13:30-14:20 Shimon Edelman (U Sussex, 連合王国); Core problems in high-level vision
14:20-15:10 岡ノ谷一夫 (千葉大); 鳥の歌の生成文法とその脳内表現:アナロジーにもとづく言語の起源の生物学


15:10 まとめの討論 (議長: 尾形良彦)
15:40 閉会の挨拶 (総研大教育研究交流センター長: 湯川哲之)



一般講演会 (3月13日, 土)

銀座 ヤマハホール 同時通訳あり


12:00 受付開始 13:00 開会の挨拶 (総研大学長 廣田栄治) 13:10 問題提起 (国際シンポジウム実施委員会委員長 尾形良彦) 13:20 佐藤哲也(総研大・核融合研): 21世紀を開くシミュレーション・サイエンス 14:10 Yan Kagan (UCLA): 地震発生の自己相似性と予知可能性 15:00 北川源四郎 (総研大・統計数理研): 統計的モデリングによる情報の抽出と知識発見
15:50-16:10 休 憩
16:10 Shimon Edelman (U Sussex, UK): 物体認識のメカニズム:なぜ初めて見たものでも認識できるのか? 17:00 金子邦彦 (東大大学院): 複雑系生命科学序説 17:50 まとめと閉会の挨拶 (総研大教育研究交流センター長: 湯川哲之) 18:00 閉 会
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Updated at 4 March 1999