統計数理研究所
機構間連携・文理融合プロジェクト
「言語における系統・変異・多様性とその数理」
研究発表会
国立国語研究所・国立民族学博物館・統計数理研究所 主催
日時:2017年12月5日 (火) 15:30〜17:20
会場:国立国語研究所 多目的室 (2階) (東京都立川市緑町10-2)
オーガナイザー:前川喜久雄・浅原正幸・横山詔一 (国立国語研究所), 菊澤律子(国立民族学博物館), 持橋大地 (統計数理研究所), 村脇有吾 (京都大学)ほか
申し込み不要・参加費無料です。
言語に関する研究は古くから言語学として行われてきており、 大学共同利用機関においても、国立国語研究所や国立民族学博物館などにおいて 日本語をはじめとする多様な言語の研究が進められております。 一方、近年では、統計モデルや機械学習に基礎を置いた自然言語処理の研究が 統計数理研究所や国立情報学研究所において活発に進められております。 しかし、現状においては、これら二つの研究領域の知的交流は非常に限定されております。 本プロジェクトでは、これら二つの領域の知見を積極的に融合させることによって、 言語を対象とした新しい科学研究の領域を開拓する可能性を検討・評価する。

このたび、プロジェクトに参画する二人の研究者から「系統・変異・多様性」の数理的研究 につきまして、言語学側・言語処理研究者側双方から話題提供いたします。

プログラム
15:30〜15:40 趣旨説明 [スライド]
持橋大地 (統計数理研究所)
15:40〜16:20 講演1 [発表資料]
「オーストロネシア諸言語の系統・変異・多様性と数理分析の可能性」
菊澤律子(国立民族学博物館/総合研究大学院大学)
【アブストラクト】
本発表では、オーストロネシア諸言語を例にとり、これまで手作業で行われてきた言語の歴史研究の手法のうち、計量的アプローチによる効率化と客観化をはかれる可能性があるのかどうか、あるとしたらどのような内容があり得るのか、検討するための素材を提供する。
オーストロネシア語族は、歴史言語学における比較方法(the Comparative Method)を用いて言語間の系統関係を特定することができた成功例としてよく知られている(Ross 1996a: 184)。文献による記録がほとんど残っていないため、系統関係を含む史的変遷の解明には、現在話されている言語の比較が不可欠で、具体的には、音対応に基づく同源語の特定と音および語彙の再建、共有変化に基づく系統関係の特定、音対応の階層に基づく関節継承語(同じ系統の言語からの借用語)の特定、などといった手続きによる。一方で、オーストロネシア諸言語を対象とした計量言語学的な研究では、(1)言語学者により同源性が特定されたデータを利用する(e.g., Russel et al.)か、(2)同源・借用を区別せず、言語の相対としての類型論的な近似性を見る研究(e.g., Wichmann to appear, Greenhill 2016?)のいずれかとなっており、比較方法の手法を計量化してより広い言語に適用するという取り組みはない(cf. Grime 2007, List and Hill 2017)。
本報告では、比較方法に基づく言語の比較再建と系統分類の概要を手法を概観しつつ、統計処理やコンピューター技術を用いて自動化したい側面を、歴史言語学者側からの視点で描写する。
16:20〜16:30 休憩
16:30〜17:10 講演2 [発表資料]
言語類型論の特徴からの潜在表現の獲得とその歴史的変化の分析への応用
村脇有吾 (京都大学)
【アブストラクト】
言語類型論の特徴の間には依存関係が知られており、独立性を仮定する分析には課題が残る。本発表では、特徴列で表現される各言語を潜在空間に写像し、その空間で歴史的変化を分析する取り組みを紹介する。

講演者略歴

菊澤律子先生 略歴:
文学修士(言語学, 1993年東京大学), Ph.D (Linguistics、2000年ハワイ大学)。1995年~2005年東京外国語大学アジアアフリカ言語文化研究所, 2005年から現職。専門は, 現地調査に基づく記述言語学, 歴史言語学、言語からみたオセアニアの先史研究。本報告関連出版物に,“The Austronesian language family” (The Routledge Handbook of Historical Linguistics, ed. by Claire Bowern & Bethwyn Evans, London, Routledge, Taylor & Francis Group, pp. 657-674)、“Ergativity and language change in Austronesian languages” (The Oxford Handbook of Ergativity, ed. by Jessica Coon, Diane Massam, and Lisa de Mena Travis, Oxford: Oxford University Press, pp. 553-588) などがある。

村脇有吾先生 略歴:
2011年京都大学大学院情報学研究科博士後期課程修了, 博士 (情報学)。同年 同学学術情報メディアセンター特定助教。2013年九州大学大学院システム情報 科学研究院助教, 2016年京都大学大学院情報学研究科助教, 現在にいたる。言 語処理学会, 情報処理学会各会員。自然言語の自動解析とそのために必要な知 識獲得の研究に従事するかたわら, 文字通りの意味での計算言語学に取り組む。

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