● DS育成事業についてビッグデータ時代のデータサイエンティスト育成の取り組み

高まるデータサイエンティストの重要性

「ビッグデータ」がバズワードであったのは2013年頃でしたが、その後社会の関心は「人工知能」や「IoT(Internet of Things)」にシフトしつつあるようです。現在注目を集めている「人工知能」のうち、実用レベルの近辺に達しているものの多くは統計的機械学習の応用であることを考えれば、人工知能ブームの担い手はまさにデータサイエンティストといえます。また、IoTについては、我が国ではセンサーなどのデバイスやロボットなどのハードウェアに目が行きがちですが、IoTがもたらす最大のチャレンジは膨大な数のセンサーから生成されるビッグデータをどのように活かしていくかであり、ここでもデータサイエンティストが中心的な役割を果たしていくのは間違いありません。ビッグデータと呼ぶか、人工知能と呼ぶか、IoTと呼ぶかに関わらず、これからの社会においてデータサイエンティストの重要性はますます高くなっていくといえます。

効果的な人材育成を目指して

本研究所では、これからの社会の要請に応えるべく、データサイエンティスト育成のための様々な研究・教育プログラムや研究環境の提供を行っています。2013年7月から2016年3月までは、文部科学省 科学技術試験研究委託事業「データサイエンティスト育成ネットワークの形成」により本研究所が中核機関となり、東京大学大学院情報理工学系研究科をはじめとする多くの機関との連携のもと、社会で強く求められているデータに基づく意思決定のできる人材を輩出するネットワークを形成しました。
さらに、2016年度には、理化学研究所・革新知能統合研究センター(AIP)が中核機関となって推進している「人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュティ統合プロジェクト」の中の人材育成事業を受託し、その事業展開を始めています。他にも健康科学に関わる人材育成事業をはじめ様々な人材育成事業に取り組んでいます。
今後も本研究所は、「我が国におけるデータサイエンティスト像のあるべき姿」を創造して、実際に社会において活躍できる多くのデータサイエンティストを育成することに貢献していきます。

  • 統計数理研究所長樋口 知之
  • 統計思考院長川崎 能典
ねらいは「棟梁」の育成

上のピラミッド型の図は、1年間に育成すべきデータサイエンティストの人数分布を表しています*1。大学では基本的なデータリテラシーを身に着け、理系修士では統計検定2級程度のスキルの習得が期待されています。その上で、「独り立ちレベル」と呼ばれる大企業で活躍するデータサイエンティスト(資本金10億円以上の企業数から推定)、さらに独り立ちレベルを指導統括するリーダーとなる「棟梁レベル」のデータサイエンティストが必要とされています。

ところが現在、我が国ではデータサイエンティストのピラミッドがきわめて細いこと、特に「棟梁レベル」のデータサイエンティストが不在であることが深刻な問題として指摘されています*1。「棟梁レベル」人材が不在では、「独り立ちレベル」人材の活躍の場も制限されてしまいます。そこで本事業では、「棟梁レベル」人材を戦略的に育成します。「棟梁レベル」の人材育成の効果は、同レベルの充実にとどまりません。「棟梁レベル」の充実は、分野をリードする世界的なトップタレントが生まれる土壌となることが期待できます。同時に、「棟梁レベル」の人材の存在は、大学や企業でのデータサイエンティスト育成の促進につながります。

  • *1 情報・システム研究機構ビッグデータ利活用に係る専門人材育成に向けた産官学懇談会「ビッグデータ利活用のための専門人材育成について」より
  • *2 McKinsey Global Institute “Big data: The next frontier for innovation,competition, and productivity”より