プロジェクト概要

次世代シミュレーションNOE代表からのごあいさつ

代表 樋口知之 (統計数理研究所 所長 / データ同化研究開発センター センター長)

気象学や海洋学などの地球科学分野で産声を上げたデータ同化の手法は、数値シミュレーションと観測・実験データをつなぐための基盤技術として、今やその応用範囲を宇宙科学や生命科学、 さらには「ものづくり」といった分野にまで広げ、自然科学や社会科学において確固たる地位を築きつつあります。 統計数理研究所では、平成14〜18年度の文部科学省研究開発局 新世紀重点研究創生プラン「人・自然・地球共生プロジェクト」、平成16〜21年度の科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 (JST CREST)「シミュレーション技術の革新と実用化基盤の構築」、 および平成18年度から継続中の京速コンピュータ「京」のための「次世代生命体統合シミュレーションソフトウェアの研究開発」において、データ同化の技術開発ならびに応用研究を実施し、この分野の黎明期から現在に至るまで、 国内外をリードしてきました。 データ同化の手法がほぼ確立されつつある今、ともすればなりがちな枝葉末節の個別研究に終始させることなく、 この研究分野をさらに大きく発展させるためには、研究領域を縦断的/横断的にまたがって研究者が連携し、 データ同化研究の現在の問題点および将来の方向性についての認識を共有しながら、一つの大きなベクトルとなって動く必要があります。

この目的を達成するため、統計数理研究所では平成22年度より NOE (Network Of Excellence) 形成事業の一環として「次世代シミュレーションNOE」 を立ち上げました。本NOEでは、時々刻々と入ってくる大量の観測データに基づいた超高次元状態変数の逐次ベイズ推定により、未来予測が可能な次世代シミュレーションモデルを構築することを大目標とし、計算アルゴリズムの開発および超高並列計算機システムへの実装に関する研究開発を実施します。また、統計的シミュレーションで必須となる物理乱数発生法の基礎研究や、モデル構築のヒントおよび研究成果にインパクトを与える可視化ソフトウェアの開発、並列計算機用統計計算プログラムを一般社会へ還元するためのクラウドコンピューティングサービスの提供にも力を注ぎます。さらには、データ同化研究を実施している国内外の大学や研究機関とも連携体制を取り、研究者同士の交流にも積極的に努めています。

各方面からのご期待に応えられるよう精進してまいります。本NOEの今後の活動にご期待下さい。

次世代シミュレーションNOEの活動内容

1. 目的・目標

シミュレーションが活用されているさまざまな研究領域の研究・教育機関と協力しながら、大量データの情報を適切に 学習し、リアルタイムに複雑な現象を予測可能な次世代シミュレーションモデルの構築を目的として、その計算アルゴリズムと超高並列計算機システムへの実装法 の研究開発を行ないます。

2. 対象とする研究領域

横断型: ベイジアンモデリング、計算統計学、シミュレーション、ハイパフォーマンスコンピューティング (HPC)、品質管理
縦断型: 宇宙・地球科学、ライフサイエンス、地盤工学、ものづくり、サービスサイエンス

3. 期待される成果

現実世界をより模倣するシミュレーションモデルを系統的に生み出すことができ、結果として予測能力の向上はもちろん、科学的知見の発見プロセスを加速することができます。データ同化により、シミュレーション結果の評価に関して統計的視点を付加することができ、自然災害予測等の社会的影響の大きいシミュレーションに基づく予測情報の提供のあり方を、エビデンスにもとづいた確率予報に転換できます。