昭和601985)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

60−共研−49

専門分類

9

研究課題名

都市環境に対する態度計量化の基礎的研究

フリガナ

代表者氏名

ミズノ キンジ

水野 欽司

ローマ字

所属機関

大学入試センター

所属部局

研究開発部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

都市環境の問題,特にアメニティ,に対する住民の認知や態度の計量化は,方法論的に未開拓の課題が多く,基礎的な事項から細部の吟味を積み上げる必要がある。
本研究は,既存の態度調査データを比較分析し,回答内容の妥当性や信頼性,尺度化可能性など,データがもつ情報的な性質を把握・整理し,それらの性質に適合するデータ解析の具体的な方式を検討する。


都市環境に対する住民の認知・態度の計量化は方法論的に多くの問題を抱えており,それへの対応には基礎的事項に戻り細部の吟味を積み上げることが重要である。本研究は,この立場から,共同研究者の過去における経験と既存の調査・実験データの分析に基づき,データがもつ情報的な性質と,それに適した調査・分析方式に関する諸問題について総合的に検討した。
結果としてえられた主な検討所見・今後の作業仮説は,以下の通りである。
1.都市住民は一般に,環境情報の受容が断片的で少ないため,個人の関心の質の差により,環境評価の分散が専門家と比べて大きくなる。(評価分散を地点間と地点内に分けた場合,地点内分散が著しく大きい傾向がある。)個人がもつ多様な関心と環境イメージと評価,これに現状の環境構成要素を加えた,いわば4重クロス的分析視点が有効である。
2.心理的特徴として,住民には生活を肯定的に考えるタイプと否定的に考えるタイプがある。通常は肯定的タイプが多く,「環境が悪い」と「自分はそこに住んでいる」という認知的不協和(cognitive dissonance)の解消として,「環境はそれほど悪くない」という消極的な肯定が多くなる。調査内容の設計や評価モデルの考案を図る場合は充分に留意する必要がある。
3.好ましい都市環境の条件として,住民の多様な欲求を満たし,かつ人々の共存が可能なこと,環境が多様な認知的文脈をもち,かつそれぞれの要素と機能が互いに強化・強調されること,などが指摘できる。これらの面を具体的に想定した内容の調査・分析を行う必要がある。
以上のような検討結果に基づき,共同研究者は改めて各自の研究を進め,61年度に予定する共同研究会で継続検討を行うことにした。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1.大隅昇,水野欽司,都市住民の環境意識の計量化法の研究−領域クラスタリング・システムとその応用−,統計数理,33巻,2号,1985。
2.水野欽司,都市環境意識調査の質問の分類,第2回・分類の理論と応用に関する研究会,1985。


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

共同研究者が,それぞれの過去における都市環境調査の経験をもちより研究討議を重ねて,以下の共通課題の検討に従事する。
1)個々の質問回答の基本的な特徴(構成概念妥当性,信頼性など)を明らかにする。
2)質問回答の縮約の技法として,尺度化(スケーリング)の種々の方式を検討し,それぞれの長短を明らかにする。
3)以上の結果を,標本抽出における地点の設定,実際の場面の質問構成などと合わせて,総合的に検討し,今後の同類調査への指針とする。
研究作業は,コンピュータ・ワークとその事後整理を主とする。また,調査地域に出向して追加資料(小規模の補助調査を含む)の収集を行う。検討結果は,資料集として印刷し,関係分野の研究者の参考に供する。
研究期間は,約2年間とする。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

井上 佳朗

鹿児島大学

大隅 昇

統計数理研究所

柏木 宣久

統計数理研究所

久野 覚

名古屋大学