公開講演会

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過去の公開講演会の概要
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例年、教育・文化週間(11月1日~7日)関連行事の一つとして公開講演会を開催しております。この講演会では、一般の方を対象に、統計数理に関連したテーマをわかりやすくお話しします。

「統計学が切り拓く脳科学、脳工学の未来」

日時: 2013年11月7日(木) 午後1:30~4:30
開場: 午後1:00
場所:
 

統計数理研究所 大会議室
会場への交通アクセス

登録不要・参加費無料
 * 会場の収容人数(約160名)を越えた場合は、入場を制限させていただきます。

 

講演プログラム

三分一史和(統計数理研究所 准教授)

「脳信号解析における統計学の役割」


 脳神経疾患や心理状態を調べるために、様々な方法で脳信号の計測が行われています。大脳表面の電場の時間的変化を調べるための脳波計測は80年以上前からなされており、近年では脳内の血流変化から賦活している部位を調べる機能的磁気共鳴画像法(fMRI)などが広く普及しています。また、最近ではヒトの脳機能を調べるという基礎研究の他、脳信号からヒトの意志や思考を読み取り、外部デバイスの操作を行うという工学的な応用研究も行われ、脳工学という分野として確立しつつあります。
 脳科学、脳工学における研究事例はいろいろなメディアで取り上げられていますが、その背後で統計学が重要な役割を担っていることはあまり知られておりません。まず、脳信号にはノイズやアーチファクトが多く混入しているので、それらを分離して脳由来の信号を検出する信号処理が必要です。さらに、脳信号や応答には個人差があり、また、同一の被験者であっても一定しないので、被験者に共通する脳信号を評価し法則性を見いだすためには統計学的な処理が不可欠で、このような評価を得ていないものは正式な研究としては認められておりません。脳機能計測技術の進歩と共により精密な脳機能計測が可能となっていますが、データ量は膨大になる一方で、また、計測装置毎に得られるデータの性質が異なるので、それに伴って新たな統計処理法の開発も必要で、脳機能計測と統計学はまさに車の両輪の関係にあります。

神作憲司(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 脳機能系障害研究部 脳神経科学研究室 室長)

「脳からの信号で機械を操作する」


 脳からの信号で機械を操作するための、ブレイン-マシン・インターフェイス(BMI)という技術が注目されています。私たちは、脳からの信号でワープロや家電を操作するための環境制御システムを開発しています。このシステムでは、いくつかの視覚刺激を提示しながら脳波信号を計測しそれを解析することで、視覚刺激のうちどれを注視しているのかを判別し、視覚刺激と関連させた家電などに指令を送ります。このシステムに用いる視覚刺激の強調表示の手法として、これまでの輝度変化に加えて緑と青の色変化を用いることで、使用感および正答率を有意に向上させ、より使いやすいシステムとすることにも成功しました。
 私たちは、このシステムの実用化に向けて、着脱容易で長時間使用可能な脳波電極や使い勝手の良いソフトウェアの開発を進めています。またこれらを用いて、麻痺を伴う患者・障害者を対象とした実証研究を行っています。
 さらに、これらのBMIと拡張現実(AR)とを統合させた新たなAR-BMI技術も開発しました。これにより、操作者の環境を脳からの信号で制御するこれまでのBMIに加えて、代理ロボットを介してリモート環境を制御することも可能です。こうした研究開発を進めていくことで、患者・障害者の活動領域拡張に貢献していきたいと考えています。

山下宙人((株)国際電気通信基礎技術研究所 脳情報通信総合研究所 脳情報解析研究所 計算脳イメージング研究室 室長)

「ヒト脳活動を精細に測るためのデータ統合技術」


 脳活動データの計測は、脳を科学するための第一歩です。計測の精度を向上させることは脳科学の新しい発見につながります。本講演では、統計手法を用いて複数の脳計測データを統合することにより、1つの脳計測データでは得ることのできない性能で脳活動を可視化する方法を紹介します。この技術をブレイン・マシン・インタフェースに応用した研究や脳内ネットワーク情報処理の可視化に拡張した現在進行中の研究を紹介します。

講演スライド(pdf)

 

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